▼苫小牧方面から海岸沿いの国道を東方へ向かい、「サラブレッド銀座」の看板を見て左折すると広大な草原が開ける。ここ北海道新冠町は、競走馬の生産地として歴代の有名馬を輩出し、一時期、隆盛を極めた。最近は有力馬が登場せず、夕張市ほどではないにせよ、町全体に沈滞ムードが漂う。

▼近年、新冠町では大手生産牧場に押され、「生産馬牧場」の看板を下ろす事業者が増えている。ハイリスクな競走馬生産業から、安定的な牧畜業へ転業したり、牧場自体を大手生産馬牧場へ転売している。第一次産業でも、「小」が「大」に呑まれる構図は同じだ。

▼地域の主要産業が衰退すれば、少子高齢化の波がやってくる。新冠町の小学校は廃校が進み、この公有財産はヤフーの「官公庁オークション」で売却されるとのニュースを耳にした。一部は資金力のある牧場関係者が購入し、「馬主が集う場」へと様変わりするそうだ。

▼馬産地の牧場の事務所には、一応、パソコンが置かれている。しかし、生産馬管理などの本業に使われている形跡はない。IT利活用の部分では、有料競馬放送を契約して観たり、馬券購入用が関の山だ。先の「集う場」にITを導入し、高画質の映像や画像を流して購入者と生産者を繋ぐ──など実業に結びつく利用を考えてはどうだろう。最近、道内の畜産農家では通信機器を使って小牛が生まれる日時を割り出すITが活躍している。斜陽産業を抱える地域ほど、ITの利用価値は高いのだ。