BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『挫折力――一流になれる50の思考・行動術』

2011/05/19 15:27

週刊BCN 2011年05月16日vol.1382掲載

 力というものは、基本的にポジティブに働くものである。本来ネガティブな「挫折」も、「力」をつけることでポジティブに変わる。よくいわれる「人は挫折を経験することで強くなっていく」とはまさにこの謂いで、裏返せば「挫折を知らない人はいざというときに弱い」となる。本書の原点はここにある。

 さりとて、挫折から学んで打たれ強くなる方法論を真正面から述べた書ではない。筆者自身、司法試験に合格しながら修習生の道を選ばず、民間のコンサルティング会社に就職。入社1年で新たに立ち上がったコンサルティング会社に移籍を余儀なくされるという「挫折」から、仕事生活を始めている。しかし、その後社長まで上り詰め、さらに産業再生機構のCOOに就任。解散後は自ら経営支援企業を立ち上げた。本書は、世間一般のレールに乗らない職業人生を切り開いてきた著者が、20代・30代の若手職業人に向けて説く組織論であり、組織人としての生き方論である。

 自分の経験を軸にしながら、挫折と折り合う技術、泥沼の人間関係を糧にする方法、決断の重要性、そして時機を得て権力を握ったとき、その権力の賢い行使の方法まで伝授する。最後に投げかけるのは、「内村鑑三とマキャベリは、あなたの中に共存できますか」という問い。キリスト教福音主義信仰に生き、不戦論を唱えた内村と、目的達成のためには手段を選ばないとまでいわれた『君主論』のマキャベリ。両者の人格の同居を許すことが、リーダーの要件なのだ。(叢虎)


『挫折力――一流になれる50の思考・行動術』
冨山和彦著 PHP研究所刊(820円+税)
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