旅の蜃気楼

私、赤ちゃんパンダの味方です

2012/07/26 19:47

週刊BCN 2012年07月23日vol.1441掲載

【内神田発】せっかくパンダの赤ちゃんが産まれたのに、産まれてとてもうれしかったのに、訃報を知って、心に空洞ができた感じだ。上野動物園に記帳台が設けられたことを知って、6日間生きた赤ちゃんパンダが喜んでいるように感じて、ホッとしている。なぜこんな気持ちになるのか自分でも不思議だ。

▼2010年10月、中国の成都に出かけた。イトーヨーカ堂の成功ぶりを見るのが目的だ。隣には伊勢丹がある。訪問日は抗日デモの真っ只中だった。デモの対象は、日本資本のデパートとされていた。この視察団の引率者は邱永漢氏(故人)だった。政府の要請で、成都にヨーカ堂を誘致したのは邱さんだったのだ。

▼視察当日、こんな話を聞かされた。デモがあるので視察は閉店間際にする。ビルに入る時間は公安からの連絡を待つ。それまでは市内視察にする──。行先はパンダ飼育センターだった。「パンダか、うんざりだな」。センターでは行列して見学する。ベビーベットに6頭の赤ちゃんパンダが横に並んで眠っている。スヤスヤと吐息が窓越しに聞こえるようだ。一頭がむずかった。手が隣のパンダのあごを直撃すると、むずむずと動きが伝わって、やがて吐息に戻った。もう一度見ようと、列の最後尾についた。かわいい。こんなにかわいい赤ちゃんパンダが本当にいるんだ。

▼その日の夜、閉店間際に視察団のバスはヨーカ堂ビルの前に止まった。武装警官が買い物客の列を割って、われわれをガードしてビルに誘導してくれた。店は買い物客で夜も賑わっていた。成都の街並み、中国人の生活風景、そして何よりも、赤ちゃんパンダのかわいらしいしぐさが印象深い旅だった。リーリーとシンシンの飼育員は、記帳に訪れる多くの人たちの姿に接して、少しは救われる思いがしたのではないだろうか。(BCN社長・奥田喜久男)

7月12日、パンダ舎の近くに赤ちゃんの写真を飾った記帳台が設けられた
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