BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『戦略おべっか』

2012/09/13 15:27

週刊BCN 2012年09月10日vol.1447掲載

 ホイチョイ・プロダクションズといえば、広告代理店を舞台に繰り広げられるちょっとブラックなコメディ『気まぐれコンセプト』。『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で30年以上続く人気の4コマ漫画だ。主人公のヒライが勤務するシロクマ広告社は博報堂、ライバルの荒鷲エージェンシーは電通がモデルといわれる。

 本書は、そんな広告代理店ウォッチャーである著者が、極めてまじめに取り組んだビジネスマナー本。底に流れているのは、3人の伝説の電通マン──『電通鬼十則』で知られる吉田秀雄、その吉田に請われてラジオテレビ局長に就いた小谷正一、ディズニーランドの日本誘致を懸けたプレゼンテーションに勝利を収めた堀貞一郎──の「気くばり」の精神だ。この「気くばり」を、著者は「能力の高い人に刺さる、わかりやすいリアルなサービス」として「戦略おべっか」と呼ぶ。このあたりは、さすがホイチョイ。

 前半では、吉田・小谷・堀ら伝説の電通マンの実例を材料に、「戦略おべっか」の存在意義を語る。後半には、これを使いこなそうとする健全な野心家のためのノウハウが詰まっている。「会議室は最後に出る。建物は最初に出る」「見送りはタクシーが角を曲がるまで続ける」といった常識的なビジネスマナーから、「上司と並んでハンコを押すときは、上司より下に斜めに傾けてつく」というちょっとアナクロなものまで、36項目。1時間で読めるが一生の役に立つことを、平成より昭和を生きた年数のほうが長い私が保証する。実行できてはいないが。(叢虎)

『戦略おべっか どんな人でも、必ず成功する』
ホイチョイ・プロダクションズ 著 講談社 刊(952円+税)

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