ITの世界には、言葉だけが先行して実体は後から姿を現すものが少なくない。ウェブ2.0しかり、クラウドしかり、スマートシティしかり……。最近は新聞や雑誌、ウェブなどで見かけることが多くなった「ビッグデータ」も、最初は耳慣れない用語だった。

 本書は、このビッグデータが、いよいよ実ビジネスに結びついてきたことをテーマにしている。成功事例として取り上げられているのは、飲食店紹介サイトの「ホットペッパー」や主婦が投稿した料理レシピを集積した「クックパッド」などだ。これらの事例でカギを握るのは、「行動履歴情報」と「集合知」の情報収集と蓄積である。そのほか、「位置情報」と「顧客情報」を結合して配車を効率化したタクシー業界の例なども紹介されている。

 インターネットが登場する以前には、POSシステムが活躍していた。チェーン店などがレジの売上データを収集・活用して“売れ筋”“死に筋”の商品を把握し、店舗運営に生かしてきた。しかし、POSデータは大量の販売情報を集めることはできるが、ユーザーの属性を客観的に、しかも自動的に把握することはできなかった。それを可能にしたのが、インターネットの登場であり、スマートフォンの普及だ。大量のデータ、それも文章や画像などのようなデータベースに収納しにくいデータを集めることによって、新しいビジネスが生まれたのだ。ITが産み落とすビジネスの内容と有望性を知るのに適した入門書である。(仁多)


『ビッグデータがビジネスを変える』
稲田修一 著
アスキー・メディアワークス 刊(743円+税)