旅の蜃気楼

持ちネタの在庫一掃処分?

2013/05/15 15:38

【内神田発】滋賀県(近江)の石馬寺のことを書いてから11日が経過した。今回は、この11日間をとても長く感じた。その間、あちこちを旅したり、『週刊BCN』編集部の地元で神田祭があったりして、感動が積み重なって、下敷きになったネタが遠い昔のようで消えてしまいそうなのです。もったいないので、そのいくつかを掘り起こしてみる。

▼近江の旅に出たのは4月27日。その前日には、新装なった歌舞伎座を観に行った。待ちに待った瞬間だ。正面の、入り口から雨よけ用に前に突き出た向拝あたりの部分は従来のものだ。その背景には歌舞伎座タワー。29階建ての和洋合体の建造物がそびえている。かっこいいではないか。3月には、東京駅前の丸の内郵便局も和洋合体建築でJPタワーの名前でオープンした。いずれも未来を感じてうれしくなる。

▼東京駅の駅舎は昨年生まれ変わった。皇居側の丸の内・中通りにあるカフェは大人っぽくって好きな通りだ。その昔、三菱電機、富士通本社によく通った。あの頃は重厚な威圧感があって、日本のコンピュータ業界はこの大通りが動かしているのだと、自慢したくなった。今は両側のショーウインドウを楽しみながら、有楽町のビックカメラまでそぞろ歩く。ここを左折して銀座に向かうと、歌舞伎座タワーがある。三原橋の交差点を右折すると、少し先に汐留のビル群が見える。この一体はまだピカピカしている。富士通はこの一角に本社を構えた。ソフトバンクもここにある。両社へ出入りする人の数が違う。これは気になるところだ。

▼おやおや、あらぬ方向に話が進んだので元によいしょっと戻す。歌舞伎座のこけら落とし、夜の部の演目は『近江源氏先陣館』だ。平安時代の武将で、近江源氏の棟梁・佐々木秀義の三男、佐々木盛綱の陣屋の話だ。この佐々木の城は、石馬寺の裏山の尾根を南にゆっくり2時間ほど歩いた繖山(きぬがさやま)にある。観音寺城跡だ。わずかに残った城の石垣に手を触れる。当時の時代の気配を感じてゾッとする。この城は織田信長に滅ぼされている。繖山から尾根を西に歩くと、安土城跡の山に続く。この地から西に琵琶湖、比良山系を望むことができる。隣の京都には御所がある。佐々木氏、織田氏などの武将にとって近江は戦の要所だ。京都まで45kmだから、フルマラソンの距離だ。

▼歌舞伎と近江は縁が深い。楽しみながら滋賀を歩いてみよう。次週に備えてネタ出しだけしておこう。上高地の奥に入ると氷壁の宿の徳澤園がある。さらに奥に入ると、横尾と続く。この道のりをトレイルランナーが走っている。新鮮だった。(BCN会長・奥田喜久男)

2013年5月9日記


新装なった歌舞伎座は威風堂々たる構えで迎えてくれる
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