BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『成長から成熟へ──さよなら経済大国』

2013/12/12 15:27

週刊BCN 2013年12月09日vol.1509掲載

広告の行き着く先を見通す

 60年にわたって広告の最前線に立ち会ってきた著者は、広告が私たちにもたらした功と罪を鋭い筆致ながら、まるで世間話をしているような柔らかい口調で伝えてくれる。

 「古事記」や「日本書紀」が国の成り立ちを広告的に書いたものであったことからして、広告は資本主義に特有の産物ではない。しかし、近代に入って“生活の設計図見本”として人々に豊かな暮らしを提案してきた広告は、大きく変質してきたという。

 戦後、日本人の憧れはアメリカの生活スタイルだった。言葉を換えれば、「浪費する人々」を生み出すことでもある。しかし、商品が行き渡った段階で、購入行動は沈静化に向かう。それでもメーカーは、モノを売っていかなければ経営が成り立たない。そこで生まれたのが「計画的廃品化」である。よく引き合いに出されるのが「電球」で、寿命が1000時間になるように設計されているというのだ。電球だけではない。例えば、自動車やアパレルなどは、スタイルや色を変えることによって、今もっているものに「古くささ」を感じるよう仕向ける。広告はこのような「計画的廃品化」に加担してきたが、そのやり方にも限界がある。

 では、これから先、広告はどんな姿になるべきなのか。著者は、「メディアの代理店としてスタートした広告代理店が、広告主の代理店を経て、消費者の代理店になっていくことが、ぼくには広告代理店の生きのびる最善の道であるように思えます」と結論づけている。(仁多)


『成長から成熟へ──さよなら経済大国』
天野祐吉 著
集英社 刊(740円+税)
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