ビッグデータに落とし穴があるとすれば、ユーザーにその利便性をどう実感してもらうかという点です。今年6月、某ITベンダーが交通系ICカードの履歴情報を分析し、駅のエリアマーケティングに役立てると発表したとたん、ユーザーからの不満が噴出したのは記憶に新しいところ。
このときは、「個人情報は確実に守られる」とユーザーに説明して、いったんは沈静化したのですが、「ことの本質は、ユーザーがメリットを実感できなかったことにある」(あるITベンダー幹部)という指摘もあります。
エリアマーケティングの精度向上で、よりよいサービスを享受できるようになるのは、間違いなくユーザーのメリットなのですが、おそらくユーザーはもっと直接的なメリットを求めているのでしょう。わかりやすくいえば、GoogleやFacebook、Twitterのように、本来であればとても無料で使えるようなサービスではないにもかかわらず、ユーザーはさまざまなデータと引き替えに直接的な利便性を享受しています。
間接的な分かりにくいメリットでは、ユーザーはもはや納得しない――。いま、まさにプロジェクトが始まろうとしている社会保障・税番号制度は、将来はビッグデータへの応用が期待されています。しかし、ユーザーにわかりやすく、直接的なメリットを提供できなければ、かつての住基ネットの轍を踏むことになりかねません。(安藤章司)
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