BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『「いいね!」が社会を破壊する』

2014/01/09 15:27

週刊BCN 2014年01月06日vol.1512掲載

便利さと引き替えに失うもの

 ITを用いて、より便利で、より快適な生活を追い求め、「無駄」の排除を続けた果てに生まれるのは、皮肉にも人間そのものが「無駄」になる社会ではないか──。

 デジタル時代の到来は、歴史のあるエクセレント・カンパニーであっても容赦なく呑み込んでしまうという事実を、著者自身がかつて勤務していたコダックを例にとって紹介している。フィルムを売れば、現像料、プリント代が入ってくるというように、三段階の収益を手にすることができる。いってみれば、完璧なビジネスモデルが構築されていたのだ。そこへ襲いかかってきたのが、デジタルカメラである。もちろん、コダックも手を拱いていたわけではない。そもそも、デジタルカメラを世界で最初に開発したのはコダックだった。しかし、フィルムは1ドルにつき70セントの利益を生むのに対して、デジタルはわずか5セントしか生み出さない。これではビジネスとして成り立ちにくい。コダックが躊躇している間に、便利なデジタルカメラはどんどん普及していった。結果、コダックは会社更生法の適用申請に追い込まれた。

 同じようなことが、さまざまな事業分野で起きている。出版業界におけるアマゾンの隆盛、そして電子書籍の台頭。金型の製作を不要にする3Dプリンタの登場。いずれ、人間の労働は機械に取って代わられる。私たちはデジタル化によって便利さを手に入れたが、失うものもまた大きいことを覚悟せよと著者は主張している。(仁多)

『「いいね!」が社会を破壊する』
楡 周平 著
新潮社 刊(740円+税)
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