BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『凄母 あのワーキングマザーが「折れない」理由』

2014/01/30 15:27

週刊BCN 2014年01月27日vol.1515掲載

企業で「母」が生き抜くノウハウ集

 女性の社会進出を表現する文脈のなかで、「DINKS」に代わって「ワーキングマザー」が使われだしたのは、もうずいぶん昔、1990年代だったと思う。本書は、働きながら子どもを育てるワーキングマザーのなかでも「したたかに仕事と育児を両立させる凄腕マザーたち」を「凄母」と命名し、彼女たちが日々実行しているサバイバルの方法を取材した極めて具体的な事例集だ。東洋経済オンラインの連載記事に、加筆して構成している。

 取り上げられるワーキングマザーは、資生堂、電通、ソフトバンク、日産など、業種・業態こそ異なれど、いずれも大企業の“母”たち11人。国が定める以上の制度が整い、社内には多くの先駆者たちもいて、環境としては極めて恵まれている。しかし、こうした制度や先駆者の存在があっても、激変するビジネス環境のなかでは、ワーキングマザーはなかなかロールモデルを描きにくい。加えて個々のパフォーマンスや家庭環境が異なれば、当然、その個人にしかあてはまらない働き方になっていく。そのなかで11人の「凄母」に共通しているのは、仕事に対する強烈なモチベーションだ。働きがいを感じながら、育児にも喜びを見出す姿は、非常にいきいきとしている。本書には、これを実現するためのノウハウが詰まっている。

 ただし、筆者が2013年を「ワーキングマザー元年」に位置づけているのは、少々浮かれすぎ。少子高齢化が進む日本で、日本の企業の大多数を占める中小企業の「凄母」たちを、もっともっと見たい。(叢虎)


『凄母 あのワーキングマザーが「折れない」理由』
佐藤留美 著
東洋経済新報社 刊(1400円+税)
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