会社のつくり方を学べる本

　「テレワーク」という言葉をご存じだろうか。情報通信技術を活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を示す言葉で、業界団体の日本テレワーク協会の前身である日本サテライトオフィス協会が1991年に設立されている。だが、テレワークが社会に広く根づいているとは言い難い。米国ではテレワーク大手の「oDesk（オーデスク）」が躍進し、2012年の流通総額は日本円で約400億円、年率60％余りの成長を遂げているという。

　しかし、ここへ来て、日本でも潮目が変わろうとしている。本書の著者である吉田浩一郎氏が設立した会社「クラウドワークス」はまさにこうした企業と個人とを結ぶビジネスマッチングサービスを展開するもので、吉田氏はこれを現代風に「クラウドソーシング」と呼んでいる。プログラム開発やデザイン考案、記事執筆などおよそインターネットで取引できるあらゆるサービスや商品を、ユーザーである企業が個人技術者やデザイナーから調達する有望サービスへ急成長した。

　本書は、30代の若い実業家がどのような経験と挫折を経て、クラウドワークスの起業に至ったのかを記述したものだ。これから事業を起こそうと考える若者に向けて、会社とは何か、どのようにして資金調達するか、どうすれば協力者と出会えるのかを平易な言葉で綴っている。日本では根づきにくいとされたテレワーク方式のどこに着眼し、吉田氏ならではのアイデアでアプローチの方法を変えていったかについてのくだりは読みどころである。（寶）


『世界の働き方を変えよう　クラウドソーシングが生み出す新しいワークスタイル』
吉田浩一郎 著
総合法令出版 刊（1400円＋税）