いま読んでおきたい現実的な憲法読本

 68回目を迎えた憲法記念日。今年も全国で大小さまざまなイベントが開催された。21世紀に入ってから目立つのは、それまでの「護憲」「改憲」というキーワードから一歩踏み込んだ動きだ。憲法改正を前提に、条文を追加しようとする「加憲」、もう一度条文を選ぼうとする「選憲」などはその代表的なもの。これに対して、より幅広い層が参加しはじめているのが、憲法についてもう一度学ぶ「知憲」という活動だ。本書もこの流れから生まれた一冊である。

 著者は2005年に『憲法はむずかしくない』を刊行し、13年にはこれに大幅に加筆するかたちで『池上彰の憲法入門』を上梓。「正確な理解があってこそ、実りある議論もできる」という考え方で「知憲」に取り組んできた。本書にしても、ジャーナリストとしてさらに踏み込んだ内容にできたはずだが、あえて抑制の利いたトーンで淡々と「知憲」に徹している。憲法前文に始まって、第一章「天皇」、第二章「戦争の放棄」という具合に逐条解釈を加え、一読しただけではわかりにくい条文については“超訳”を試みた。条文を巡る過去の議論や現実との乖離について、逐一指摘していくくだりは、テレビでもおなじみの著者の独壇場だ。

 巻末では、国連憲章を引きながら、解釈改憲である集団的自衛権を巡る議論を紹介。また、現実との乖離が大きい北朝鮮・中国の憲法と、同じ民主主義でありながらシステムの異なる米国の憲法を紹介している。現実的な実りの大きな「知憲」のために、いま読んでおきたい一冊だ。(叢虎)


『超訳 日本国憲法』
池上 彰 著
新潮社 刊(780円+税)