BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『最速の仕事術はプログラマーが知っている』

2015/08/27 15:27

週刊BCN 2015年08月24日vol.1592掲載

原則が教えるビジネスの勘どころ

 アップルのスティーブ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、グーグルのラリー・ペイジ、アマゾンのジェフ・ベゾス、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ。ITビジネスの頂点に立つ人には、プログラマー出身の人物があまた存在する。彼らに突出した才能と創造力があったことは間違いないが、ジョブズが「コンピュータ言語を学ぶことによって考え方を学ぶことができる」と語ったように、その原点にはプログラミング作業独特の思考法があった。

 プログラマーの世界には、「KISS(シンプルにしておけ)」「DRY(同じことは書くな)」「YAGNI(必要になってからつくれ)」など、ムダをそぎ落とし、美しく効率のよいプログラムを書くための原則がある。これらを一般のビジネスパーソンにとって身近な作業や情報収集に適用すると、非常に効率よく仕事ができるようになる、というのが本書の主題だ。「長文の記述にはテキストエディタを使う」など、具体的な仕事術は決して目新しいものではない。しかし、プログラマーの原則、すなわちアルゴリズムの最適化という一本の背骨を通すことによって、一つひとつの行動に意味と動機が生まれる。さらに、原則を単なる仕事術だけでなく、情報の整理法や仕事の段取り、チームワーク、リーダーシップ、ビジネスの設計など、適用の範囲を広げていくことで、全体がうまく回るようになる。

 著者は、2004年に情報処理推進機構(IPA)の未踏ソフトウェア創造事業で天才プログラマー/スーパークリエイターに認定された起業家。06年には本紙「FACE」に登場している。BCN Bizlineでご一読いただきたい。(叢虎)


『最速の仕事術はプログラマーが知っている』
清水亮 著
クロスメディア・パブリッシング 刊(1480円+税)
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