BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『「関ヶ原合戦」の不都合な真実』

2015/10/22 15:27

週刊BCN 2015年10月19日vol.1600掲載

“賊軍の将”に転落していた徳川家康

 日本史において最も著名な合戦といえば、関ヶ原の戦いといっても過言ではないだろう。1600年というキリのよさ、たった1日で決着がつくというスピード感。そして、関ヶ原の戦いの後に約260年続く江戸時代が始まることから、歴史マニアでなくとも多少の知識はあるはずだ。

 関ヶ原の戦いで描かれがちなストーリーは、東軍を率いた徳川家康は勝つべくして勝ち、西軍を率いた石田光成は負けるべくして負けたというもの。なかでも、西軍か東軍かで迷っていた小早川秀秋が、家康の脅しともいえる督促に屈して東軍につくところは、関ヶ原の戦いを象徴する欠かせないシーンである。

 こうした予定調和のストーリーに対し、疑問を投げかけるのが本書。後世に語り継がれた関ヶ原の戦いは、江戸時代に脚色されたものとして、関ヶ原の戦いの真実を追究している。勝つべくして勝ったとされる徳川家康は、むしろ“賊軍の将”に転落していたという。

 本書は、関ヶ原の戦いに至るまでの経緯から分析。誤算の連続だった家康について描く一方で、全国の武将の動き、そして光成の心中に迫りながら、関ヶ原の戦いまでを近年解明された情報をもとに解説している。最終章では、定説とともに、関ヶ原の戦いの真実を解説していることから、合戦当日の模様がイメージしやすい。

 ちなみに、本書によると、家康の督促で秀秋が東軍に加勢するという流れは、真実ではなく、開戦とほぼ同時に東軍に加勢する。秀秋の裏切りにより、西軍はたった2時間ほどで総崩れになったそうだ。(亭)


『「関ヶ原合戦」の不都合な真実』
安藤優一郎 著
PHP研究所 刊(740円+税)
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