BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『オープン・オーガニゼーション』

2016/11/09 15:27

週刊BCN 2016年10月31日vol.1651掲載

なぜオープンな組織が優秀なのか

 日本人が米国企業に対して誤解していることは、数多く存在する。例えば、CIOの存在。米国ではCIOが経営層の一員として活躍しているとされるが、ありがちなのは総務部門の役員の部下で、「どうしたら役員会に呼ばれる立場になれるのか」が課題だったりする。限られた企業の最先端の取り組みを、あたかもすべての米国企業が取り組んでいるかのように紹介する風潮に原因があるのだろう。

 「リストラをしやすい風土」も米国企業の特徴とされる。そうだとしても、リストラを担当する側は、米国企業でも心穏やかではいられない。「リストラのプロセスは同僚にとっても私にとっても、非常に心苦しいものだった」と本書で回顧するシーンがある。著者のジム・ホワイトハースト氏は、現在のレッドハットCEO。前職では、デルタ航空のCOOとして、リストラを担当していたという。

 本書の書き出しも興味深い。「さまざまな業界のリーダーと会うと必ず話題になるのは、組織を迅速に動かし、競争力を維持することの難しさだ」。米国企業の多くが、ビジネス環境の変化への対応に苦慮していることがわかる。

 そこで、本書のタイトルである「オープン・オーガニゼーション(オープンな組織)」というわけだ。モデルとなっているのは、レッドハット。ポイントは、同社がオープンソースソフトウェアの文化を組織管理に適用しているということ。無償のソフトウェアを販売する。この一見矛盾したビジネスで成功を収めた同社の組織論が集約されている。(亭)

『オープン・オーガニゼーション』
ジム・ホワイトハースト 著/吉川南 訳
日経BP社 刊(1800円+税)
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