BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『一言力』

2017/01/11 09:00

週刊BCN 2017年01月02日vol.1659掲載



つい話が長くなってしまうあなたへ

 他人の長い話には、誰もがイライラする。「結論は何だ、結論は!」なんて叫びたくなってしまうが、そう思うあなたはどうだろうか。話は短いほうがいいとわかっているはず。でも、多くの人は長話をしてしまっていることに気づいていない。あなたも例外ではないはず。

 とはいえ、どうせ話をするのであれば、相手に理解してほしいし、納得してほしい。提案書なら、相手に強い印象を与えたいし、心を動かしたい。そこで、本書である。

 タイトルの「一言力(ひとことりょく)」について、「短く本質をえぐる言葉で表現する能力」と著者は定義している。一言力で思い浮かぶのは、小泉純一郎・元総理大臣。総理大臣の頃を知っていれば、「感動した!」だけで思い浮かぶシーンがあるはず。数々の難局も、一言力で突破していった。

 ポイントは、多くの人には一言力が備わっていないということだ。短い言葉を使うだけならできそうだが、“本質をえぐる”のが難しい。コツをつかむまで訓練が必要ということで、本書では一言力を身につけるためのノウハウを紹介している。

 本文から、一言力の事例を一つ紹介したい。京都大学の山中伸弥教授が命名した「iPS細胞」。最初の「i」が小文字なのは、欧米で受け入れてもらうことを意識し、アップルの「iPod」をヒントにしたからだという。「IPS細胞」だったら普及しなかったと、著者は指摘している。ちなみに、本紙では「IaaS/PaaS/SaaS」の総称として、「iPSサービス」を紹介したことがあるが、まったく普及していない。(亭)


『一言力』
川上徹也  著
幻冬舎 刊(800円+税)
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