最短解決に必要なのは「スピード」か

 ビジネスシーンでは「巧遅より拙速」を目指すべきとよく言われる。あれこれ考えて最初から完全なものを作ろうとするより、まずは行動せよといった意味と捉えれば良いのだろうか。しかしこの本の表紙には「とりあえず、『やればいい』ってもんじゃない」と書かれている。行動の前にはやはり慎重に考えるべき、が著者の主張なのか。

 実際には本書にも「シミュレーションや学ぶことは大切ですが、『まずやること』の優先順位を下げてはいけません」と書かれており、行動の「スピード」は最も重要な要素の一つとして挙げられている。しかし著者は、行動には「量」や「質」も求められ、それらのバランスを意識してマインドセットを変革せよと主張する。「成功のためには、一つのことにコツコツと努力する積み重ねが必要だ」という考え方は一見正しいが、正面から努力をせずに成果を得る方法がないかを考えることも、イノベーションを生むには必要だ。例えば、「待ち時間が長い」というクレームへの対応として、通常は待ち時間自体を短くしようと考えるが、「待ち時間を楽しく過ごしてもらう」アイデアがあれば解決することもある。行動自体のスピードを高めると同時に、課題の前提を変えてみることで、最も素早くゴールにたどり着ける可能性が高まる。若い起業家を想定して書かれているが、「努力はしているつもりだが、成長になかなか結びつかない」と感じている中堅ビジネスパーソンが初心に返るにも有用な内容。(螺)
 


『行動の品質』
伊藤健太 著
フォレスト出版 刊(1600円+税)