「危機の時代」を生き抜き、他社を出し抜く

 これまでに政治家や芸能人のスキャンダルなどを暴いてきた週刊文春。同誌のスクープは「文春砲」と呼ばれ、世間から大きく注目されるようになった。本書は、長年にわたって同誌を率いてきた新谷学・文藝春秋編集長が言う「危機の時代」を生き抜き、他社を出し抜くためのヒントを示している。
 

 新谷氏は、2012年から同誌編集長、18年から同誌編集局長を務め、今年7月から現職。本書では、デジタルの時代となり、従来のビジネスモデルが通用しなくなりつつある中、編集長や編集局長在任中に実践してきた組織マネジメント術やデジタル戦略などを披露する。

 スクープを取るためには、膨大な労力と時間、コストをかけなければならない。記事を出したことで、世間から非難されたり、相手側から訴えられたりするリスクもある。それでも、同誌はスクープを連発し、他社との差異化に成功した。業種は違っても、他社との違いを出すことは重要な要素で、本書にはビジネスのヒントがちりばめられていると言える。

 SNSが普及し、誰でも意見を発信できるようになった今、いったん問題が起これば瞬く間に“炎上”する。対応を誤ると、火に油を注ぐことになり、収拾がつかなくなる場合もある。企業としては最も回避したいケースだろう。

 華々しいスクープに目が行きがちだが、同誌も炎上したことがないわけではない。危機的状況を脱すために、リーダーとしてどのように対応するかという点でも、新谷氏の一つ一つの言葉には重みがある。(鰹)


『獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論』
新谷学 著
光文社 刊(1760円)