「詰め込み型」から「理解・創造型」へ

 表題こそ「賢い子はスマホで何をしているのか」とキャッチーだが、中身は子どもとスマホの狭い範囲にとどまらず、国内外の教育現場で起きている革命的な変化を分かりやすく解説している。
 

 インターネットは、人間の「外部記憶装置」の役割を果たし、大抵の言語はAIが翻訳してくれる。「詰め込み教育」よりも「考える力」、「外国語の丸暗記」より「何を話すか」が重視される時代。従来の「レコード(記憶)」に偏重した教育ではなく、「エンゲージメント(理解、創造)」の力をつける取り組みがより強く求められる。

 コンピューター業界でも、「レコードからエンゲージメントへと価値の中心が移る」と言われて久しいが、これは社会の変化を反映したもの。社会の発展に伴って「学校教育も変わらなければならない」と、デジタル教育の普及に努めてきた著者の石戸奈々子氏は説く。

 しかし、学校現場ではチョークで教員が板書したものを、児童・生徒が紙のノートに鉛筆で書き写す昭和時代の舞台セットを再現したような光景が続く。

 プログラミング教育やGIGAスクール構想の施策によって、ようやく時代に追いついてきた感があるものの、肝心の中身はまだこれから。むしろ性急に答えを求めず試行錯誤のなかからデジタル時代の効果的な学習方法を見つけ出すことが大切と本書では指摘しており、この点もソフト開発のアジャイル的な手法に似ている。コンピューターが教育分野を含むあらゆる業種・業態に深く入り込んでいるからこその現象だと言える。(寶)


『賢い子はスマホで何をしているのか』
石戸奈々子 著
日経プレミアシリーズ 刊(900円+税)