ウイグル問題の根深さを世界に伝える

 中国北西部に位置する新彊ウイグル自治区は、かつてはシルクロードの交易地として栄えた。少数民族のウイグル人らが独自の文化を発展させてきたが、最近は中国政府による人権弾圧が世界で大きく取り上げられている。本書は、中国政府による「監視」や「抑圧」の状況を描写し、ウイグル問題の根深さを世界に伝えている。
 

 著者は米国人の調査報道ジャーナリスト。2017年8月から20年9月まで、計168人のウイグル人の難民や技術労働者、政府関係者らにインタビューしたという。その中で知り合ったウイグル人女性が本書の主人公。彼女が見てきた新彊の“現実”は、われわれ日本人の想像をはるかに上回るだろう。

 中国政府は、新彊での人権弾圧を一切認めていない。本書に書かれている内容の真偽を確かめる術はないが、「拷問」や「洗脳」などの言葉は非常にインパクトがある。事実ならば断じて許されない行為だ。

 人々の暮らしを便利で豊かにするものとして、ITへの注目は高まっている。とくに新型コロナウイルスの感染が拡大して以降は多様な働き方を支える役割も担っている。ただ、扱い方次第では、本書が示す「デジタル化された牢獄」になる可能性があることを忘れてはならない。(鰹)


『AI監獄ウイグル』
ジェフリー・ケイン 著、濱野大道 訳
新潮社 刊 2420円(税込)