BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『動物たちは何をしゃべっているのか?』

2023/11/10 09:00

週刊BCN 2023年11月06日vol.1991掲載

多種多様な「言葉」を解説

 漫画やアニメなどでは、人間と動物がコミュニケーションを取っている光景がよく描かれる。しかし、現実世界だと同じようにはならない。当たり前だが、鳴き声を聞いても何を言っているか分からないからだ。

 本書は、ゴリラの研究で世界的な権威である山極寿一氏と、シジュウカラ科に属する鳥類の研究を専門とし、鳴き声の意味や文法構造の解明を目指している鈴木俊貴氏の対談を収録している。動物の鳴き声を「言葉」と表現するなど、研究者の目線で動物の生態を詳細かつ丁寧に解説。ITによる人間社会への影響にも言及し、内容は多岐にわたる。

 特に鳴き声の意味が多種多様であることには驚いた。例えば、シジュウカラは、天敵が近くにいる場合は仲間に対して注意を促し、餌を見つけた際は集まるように呼び掛けるのだという。

 動物は、われわれが気づかない危険をいち早く察知することができるようで、ゴリラの群れの中で暮らしたことがあるという山極氏の「ゴリラのそばにいることは、人間にとっても安全」との発言は説得力がある。まだ人間と動物がコミュニケーションを取ることはできないが、将来的に漫画やアニメなどで見たことが現実になり、暮らしが大きく変わるかもしれないと期待が大きくなった。(鰹)
 


『動物たちは何をしゃべっているのか?』
山極寿一、鈴木俊貴 著
集英社 刊 1870円(税込)
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