店頭流通

新商品登場でデジカメ市場好調 前年上回る販売実績が続く

2002/08/12 18:45

週刊BCN 2002年08月12日vol.953掲載

 一時は前年割れとなっていたデジタルカメラの販売台数。それがここにきて夏商戦に登場した新商品が市場を牽引、復調の兆しを見せている。富士写真フイルムの「ファインピックスF401」、ニコンの「クールピクス2000」といったボリュームゾーン向け機種に加え、容量を100グラム以下におさえたカシオ計算機の「エクシリム」、ソニーの「サイバーショットU」など小型機種の登場で、店頭が活気づいている。「デジカメ市場は、国内・海外ともに拡大している。そのため、参入するメーカーは増加傾向にあり、製品のライフサイクルも短くなっている」(富士写真フイルム・加藤典彦執行役員・電子映像事業部長)という声がメーカー側からあがるなど、年末に向け新商品攻勢が続く見通しだ。(三浦優子)

■富士写真フイルム、シェアトップに

 今年4月、5月は販売台数で前年を割り込んでいたデジタルカメラ市場。それが6月に入り、好調ぶりが戻ってきた。 BCNランキングによる販売推移(週次)では、4月から6月10-16日の週までは前年を割り込む週が続いていた。しかし、6月17日の週から前年を上回り始め、7月15-21日、7月22-28日の2週間は前年比140%以上と大きく前年を上回る。これは5月、6月、7月に発売になった新製品の好調な売れ行きが要因。

 7月のベンダー別台数シェアでトップとなったのは富士写真フイルム。同社は1月の時点ではシェア19%でトップだった。ところが、2、3月はオリンパス光学工業、4、5月はキヤノン、6月になるとオリンパスが再びトップに返り咲くなど、1位から遠ざかっていた。

 この7月、富士写真フイルムがトップシェアを獲得できたのは、6月19日に発売した「ファインピックス F401」の売れ行きが好調なため。この機種は、最も売れ筋の価格帯である4万円台後半(実売価格)、薄型・軽量ボディで光学3倍ズームを搭載している。同社では、人気タレントの藤原紀香さんを起用したテレビCMをW杯中継の合間に流すなど、力の入った販売戦略を行った。

 この作戦が見事に功を奏し、富士写真フイルムのトップシェア奪回に貢献した。同社ではこの成功をきっかけにさらにシェアを拡大させていきたい意向で、9月には新たに3製品を投入し、「シェア30%獲得を狙う」と意気込む。

■各社、戦略商品を投入

 富士写真フイルムと同様、売れ筋スペックと価格帯で人気なのがニコンの「クールピクス2000」。 この製品はニコンの戦略機種。2メガピクセルクラスで3倍ズームを搭載した小型ボディを実現し、シェアアップを目的に6月下旬に市場に投入された。

 その狙いは見事にあたり、現在のところニコンのシェアは6位で、5位のカシオに肉薄するまでに販売数量を伸ばしている。7月月次の対前年比で見ると、実に台数で887%、金額で577%の大躍進となっている。

 ニコンと富士写真フイルムの躍進は、売れ筋のスペックで価格帯にあわせた商品を市場に投入すれば、シェア拡大につながることを如実に示した。

 話題という意味では、カシオ、ソニーの2社が発売した夏の新商品は、パソコンマニア、カメラマニアからファッションにこだわる若い女性まで幅広い層から注目を集めている。

 6月21日発売のカシオ「エクシリム」は、「世界最薄」をアピールする。従来のデジカメ、スチールカメラと比べれば、薄さは一目瞭然。その厚さはわずか11.3ミリ。カシオでは正式な発表前の3月、ドイツのCeBITでお披露目を行い、発売前から注目度は高かった。

 発売以来安定した売れ行きを続けており、7月の月次では台数シェア3位を獲得する人気機種となっている。

 同じくその小ささが話題を集めているのが7月20日発売のソニー「サイバーショットU」。エクシリムは85グラムだが、サイバーショットUはそれを若干上回る87グラムで手の平サイズを実現。色を3色揃えるなど、女性にアピールするファッション性をもっている。パソコン誌だけでなく、女性誌でも盛んに取り上げられている。

 発売から間もないこともあって、7月月次ランキングでは機種別シェア29位にとどまっているが、8月以降どれだけシェアを伸ばせるか。要チェックだ。

 全く新しいタイプの商品が登場したことで、店頭の売り場も賑わいを取り戻しつつある。「手にとって試すユーザーが増えている」という声もあり、実際の売れ行き以上の効果をもたらしたといえる。技術革新がユーザーを店頭に呼び込む最大の要因であることを、今年夏のデジカメ新商品が実証した。今後も技術革新が続いていけば、前年を上回る販売を継続することは決して不可能ではない。

■さらに小型化が進む

 小型の製品に関しては、ほかのメーカーも発売に意欲的だ。ソニーの小型メモリスティックやオリンパスと富士写真フイルム、東芝が共同で開発したxDピクチャーカードなど、さらなるカメラの小型化を実現する極小サイズのメモリが出てきた。「より小型、軽量化」がデジカメのひとつのトレンドとなっていきそうだ。

 しかし、小型のデジカメは、本格的に市場が出来上がる前にもかかわらず、大きなライバルがすでに存在する。それはカメラ機能付き携帯電話。画質よりも手軽さを優先するユーザーは、デジカメから携帯電話に流れるといわれている。それだけに、デジカメには手軽さと共に、携帯電話にはない機能の充実が必要になってくる。

 メーカーにとっては、小型化と機能の充実、さらには低価格化と厳しい条件ばかり揃うことになるが、店頭を賑わすという面ではプラス材料。これらの条件が揃った機種が各社から発売になれば、当面デジカメ市場は好調が続いていくのではないか。
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