店頭流通

コンシューマ向けパソコン 魅力的な製品開発を

2004/02/02 16:51

週刊BCN 2004年02月02日vol.1025掲載

消費者が振り向く魅力的なパソコンを開発して欲しい──。パソコン専門店や家電量販店、ディストリビュータのメーカーに対する共通の意見だ。日本電気大型店協会(NEBA)がこのほど発表した2003年1─11月のパソコン販売実績は、台数が前年同期比6%減の148万983台、金額が同11%減の2565億5381万円と前年を下回った。

 薄型テレビやDVDレコーダーの販売が好調なことから、ビジネスの柱がパソコン・関連機器からデジタル家電にシフトしつつあるのが販売店の実情だ。一方、電子情報技術産業協会(JEITA)は、昨年(1─12月)のパソコン出荷台数が前年比5%増の1056万2000台と00年以来、3年振りのプラス成長だったと強調、販売店側との間で認識に温度差が開きつつある。

 NEBA会員企業のパソコン販売実績は、03年10-11月が台数で前年同期比3%減の22万8503台、金額で同6%減の393億3804万円と、年末商戦は厳しい状況だった。NEBAの岡嶋昇一会長(エイデン社長)は、「年末商戦で唯一悪かったのが情報機器。昨年前半には回復基調が出始め、この傾向が継続するとみていたが、11月に大きく落ち込み、12月はさらに悪化した」と話す。

 「昨年は、10月の個人向けパソコンリサイクルの実施をにらみ、メーカーが年末商戦向け商品を9月に1回、11月にもう1回と投入した。しかし、消費者にとって魅力のある商品が出てこなかった」(岡嶋会長)と指摘する。

 エイデンは、パソコンの売上高が03年度(04年3月期)の9月中間期で前年同期比15%増、中古パソコンとホワイトボックスを含めると同26%増だった。ところが、下期に入って10月が新品で前年同月比10%増、11月が同8%減、12月で同10%減と続けて減少した。

 岡嶋会長はエイデン社長の立場からも、「ユーザーは新品に魅力を感じず、中古品を購入している」との見解だ。

 ソフマップの山科光男社長は、「昨年前半はパソコン需要が回復したようにみえたが、後半になって失速した」と、パソコン専門店にとっても厳しい1年だったという。個人向けと法人向け双方でパソコンを販売する丸紅インフォテックの梅哲雄社長も、「トータルで若干伸びたという感触があるものの、コンシューマ向けの販売は厳しい」と語る。

 ショップで販売が好調なのは、薄型テレビやDVDレコーダーなどのデジタル家電だ。NEBAの岡嶋会長は、「薄型テレビのなかでも、液晶テレビは前年の3倍以上」と語る。

 NEBAが昨年11月1日から今年1月31日まで実施した地上デジタル放送対応テレビの販売キャンペーンでは、「昨年12月31日時点で7万5500台と、3か月間の目標台数である10万台の75%を達成した。キャンペーン期間内の目標突破は確実」と自信をみせており、「今年はアテネオリンピックの開催もあり、地上デジタル対応テレビがますます伸びそうだ。販売店にとって、地上デジタル放送の普及が売上増のポイントになるだろう」とみる。DVDレコーダーについても、「3倍強の売れ行きをみせており、消費者からの引きが強い」という。

 一方、メーカー側に立つJEITAは、「パソコン市場が回復基調にある」(篠崎雅継・パーソナルコンピュータ事業委員会委員長)と、ショップの見解とは逆の見方を示す。03年度の通期見通しについては、昨年10月に台数で前年度比4%増の1020万台と予測していたものを、1月になり同5%増の1070万台へと上方修正した。出荷金額も1兆5700億円から1兆6000億円へと上方修正したものの、前年度実績の1兆6160億円を下回る見通し。1台あたりの平均単価は15万4000円から15万円に下方修正した。

 販売店にとっては売れ行き不振に加え、パソコンで利益を確保することがますます難しくなりつつある。メーカーにとっても04年は“正念場”で、需要を喚起するような製品開発を徹底することが急務といえる。

 ソフマップの山科社長は、「消費者が求める良い商品を開発すべき。売れる商材を出して欲しい」と訴える。NEBAの岡嶋会長も、「パソコン市場が成熟するなか、ユーザーの声に耳を傾けるべき」と提言する。

 販売店が掲げているのは、「デジタル家電とパソコンを連携させる中間機器」(NEBAの岡嶋会長)や、「デジタル家電を補完する周辺機器」(丸紅インフォテックの梅社長)など。拡大するデジタル家電の追い風に乗る商品を開発することも、パソコン市場回復の1つの策になる。
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