拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>5.薄型テレビ(上)

2004/10/04 16:51

週刊BCN 2004年10月04日vol.1058掲載

 家電量販店に行くと、1階の最も目立つスペースに、薄型テレビがずらりと並ぶ、そんな光景は今や当たり前の光景になった。テレビでも毎日のように液晶テレビやプラズマテレビのCMが流れ、アテネ五輪などのイベントがその流れを確実に加速させている。これまでテレビの王者として君臨してきたCRT(ブラウン管)をようやく薄型テレビが代替する時期が訪れてきたのである。(岸本 章 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 2000年頃から日本を皮切りに薄型テレビは徐々に市場に認知され始め、03年度時点での全世界の薄型テレビ(液晶テレビおよびプラズマテレビ、リアプロジェクションテレビの総計)の出荷台数はおよそ300万台程度となった。これが、08年には全世界でおよそ10倍の3000万台にまで成長すると考えられる。

 このように考えると、いかに薄型テレビの市場が急拡大しているかが分かる。しかし、全世界のテレビの需要台数1億3000万台から見ると、08年時点でも薄型テレビの普及率は実は30%にも満たないのである。すなわち、量販店でフロアをあれだけ賑わせている薄型テレビではあるが、実は薄型テレビの市場はまだまだほんの黎明期に過ぎない。というのもまだまだCRTを本格的に代替するには、克服すべき課題が多いのである。

 薄型テレビの代表格である液晶テレビを例にとると、応答速度がCRTに比べて遅いために、スポーツなどの高速動画に完全に対応しきれない点や、色再現性が落ちる点など、CRTに技術的に劣っている点は確かに存在する。しかし、現状での最大の課題は「価格」である。一般市民にも薄型テレビがようやく浸透してきた昨今、液晶テレビが本格的に市場に浸透するためには、コストを下げて価格をCRTにどれだけ近づけられるか、である。

 現在、日本のシャープや韓国の三星電子、台湾の友達光電などの大手液晶パネルメーカーはしのぎを削って、工場の設備投資を行い、量産効果によるコストダウンを行い、液晶テレビの普及速度を速めようと懸命である。これは他の薄型テレビに関しても同様である。このように各社のコストダウン戦略により、CRTの完全代替には、まだ時間がかかるものの、確実に既存領域を薄型テレビが侵食していくことは間違いないであろう。ただし、薄型テレビの今後を考えると、CRT市場の侵食というだけでなく、薄型テレビ同士でのパイの奪い合いという構図も見え隠れする。次回は、薄型テレビの競合関係などについてご紹介していきたい。
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