店頭流通

ハガキ作成ソフトの年末商戦 “原点回帰”で新規需要掘り起こし

2004/10/04 16:51

週刊BCN 2004年10月04日vol.1058掲載

 ハガキ作成ソフトの年末商戦向け商品が出揃った。今年は、各メーカーとも前年同期実績を上回ることが必須課題。“簡単操作”をベースに、ハガキ作成ソフトの原点に戻ることで新規ユーザーの掘り起こしを狙う。ハガキ作成ソフトの店頭販売は、今年夏商戦に大幅な落ち込みを強いられ、危機的状況にある。それだけに、年末商戦は各社にとっての正念場でもある。“原点回帰”でハガキ作成需要が持ち直してくれば、パソコンやプリンタ、消耗品などにも波及効果が期待できる。

夏商戦の落ち込み挽回へ

 クレオは、年末商戦向けの「筆まめVer.15」で、ハガキ作成ソフト本来の使いやすさを追求した。これまでは高機能化に主眼を置き、若年層を獲得する戦略も立てていたが、従来からのターゲットである40歳代に照準を定め、初心者や乗り換えユーザーの獲得を狙う。

 大森俊樹・コミュニケーション事業部執行役員事業部長は、「ソフトを使っているうちに誰もが直感的にたどりつけるよう、取扱説明書が必要ないほどの使い良さを徹底し、初心者でも分かるように仕上げた」と話す。同時に、二次元コード「QRコード」の作成ニーズやカメラ付き携帯電話で撮影した写真を取り込むニーズが増えているとして、携帯電話を意識した機能強化を図った。

 クレオでは、10-12月期の販売本数で「前年同期比10%増を目指す。最低でも前年同期並みにする」(大森事業部長)と意気込む。

 “かんたんNo.1”をキャッチフレーズに掲げるアイフォーは、「筆王2005 for Windows」により幅広い年齢層の初心者、幼児をもつ30歳代前半の女性をユーザーに獲得していく方針だ。

 新バージョンの目玉は、すべての機能を1つの画面から操作できるようにした点。これにより、従来見過ごされてきた機能に触れてもらう機会を増やし、「ユーザーに新しい発見をしてもらう」(佐藤篤副社長)という作戦だ。さらに、PCカメラや携帯電話で撮影した画像を加工できる機能を加え、初心者に年賀状づくりの“楽しさ”を提案するという。

 すでに、「新バージョンの出荷本数は過去最高を記録している。年末商戦は前年同期の2倍を達成してトップシェアを狙う」(同)と鼻息は荒い。

 富士ソフトABCは、「これまでバンドルとパッケージ販売の割合は6対4と、バンドルに比重を置いてきた。このバンドル戦略が功を奏し、パッケージの販売にも弾みが付いてきた」(岡野正幸・IT事業本部エキスパートハウス筆ぐるめ室室長)とし、他社製品からの買い替えと、パッケージのバージョンアップ版を購入するユーザーが増加していると強調する。

 同社の新バージョン「筆ぐるめVer.12」では、他社ソフトからの乗り換え版も新たに発売し、“筆ぐるめ初心者”の裾野拡大に一層拍車をかける。年末商戦では、販売本数で前年同期比30%増を見込んでおり、バンドルとパッケージの販売比率を5対5にしていく意向だ。

 ソースネクストは、最新版「筆休め2005」で、マウスを使ってパソコン上で手書き入力が可能な「Win書道」機能や、自動インストール、音声ガイドなどの機能により高齢者の購入を促す。販売本数については、「昨年実績と同様の5万本が目標」(石山努・プロデュースグループプロデュースチームマネージャー)と控えめ。だが、これと並行して、アジェンダとの提携で販売を開始した「宛名職人2005」ウィンドウズ版でも5万本の販売を見込んでおり、トータルで「前年同期の2倍の成長」を見込む。

 一方、アジェンダは10月8日に「宛名職人」のマッキントッシュ版「宛名職人Ver.12マッキントッシュ」を発売する。マック用のハガキ作成ソフトのうち、「現在、約98%のシェアを持つ」(佐々木智一・コンシューマプロダクツ部部長)という。今年の年末商戦は、「前年同期に対し30%増」(同)を目指す。

 BCNランキングによると、ハガキ作成ソフトの販売は、今年6月が本数ベースで前年同月比33%減、金額ベースで同28%減、7月が本数で同29%減、金額で同26%減、8月が本数で同38%減、金額で同32%減と低空飛行が続き、この夏は苦戦にあえいだ。

 これを年末商戦でどこまで巻き返せるか。まだまだ年賀状を手書きで作成している人は少なくないだけに、各社が打ち出す“簡単操作”が潜在需要を呼び起こす引き金になれば、市場は再び活気を取り戻し、同時にパソコンやプリンタなどの需要動向にも好影響を及ぼすだろう。

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