店頭流通

アビー クリエイター向けにパソコン販売へ 第1弾はPCケース、来春に完成品

2004/11/01 17:00

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

 今年8月設立のパソコンおよび関連機器ベンダーのアビー(坂口信貴社長)は、個人向けビジネスに本格的に乗り出す。第1弾として、今年の冬商戦向けにPCケースを近く発売する。対象ユーザーをエンジニアやデザイナー、ミュージシャンなどのクリエイターに特化し、競合他社との差別化を図っていく。来春には、完成品のデスクトップパソコンを市場に投入。2005年度(06年3月期)には5億円の売上高を狙う。

 アビーは、パソコンおよび関連機器の開発、個人向け販売を目的として今年8月に設立された。生産は国内のメーカーに委託するファブレス方式を採用。設立から約2か月間は、パソコン専門店や家電量販店など販売代理店の開拓に力を注ぎ、東京・秋葉原電気街を中心に複数店舗との契約に漕ぎ着けた。製品については、まず年内をめどにミドルタワー型でアルミボディのPCケースを発売する。

 同社は、パソコンマニアではなくクリエイターを対象ユーザーとすることで、「競合他社との差別化を図っていく」(坂口社長)方針。最初にPCケースを発売するのは、「最近は、クリエイターが業務に最適な機能をもつパソコンとして、BTO(受注生産方式)や組み立てパソコンを選択する傾向が高まっているため」としている。まずは自分好みの仕様を求めるクリエイターを顧客として増やしていく考え。

 デザイン面では、強制冷却機能を搭載しなくても冷却性が保てることに加え、静音性能にこだわった作りに仕上げているという。出荷台数は、「発売後1年間で1万台を目指す」方針。

 春商戦には、OS(基本ソフト)にウィンドウズを搭載した完成品のデスクトップパソコンの発売を計画している。同社がメインターゲットとするクリエイターは、メーカー製のデスクトップパソコンではアップルコンピュータの「iMac」を選択する場合が多い。しかも、ウィンドウズOSのパソコン市場は競争が激しい。しかし、「PCケースの販売が軌道に乗れば、知名度が向上し、デスクトップの拡販につながる」と考えており、「大手メーカーが発売する製品は、ハイエンドからエントリーまで幅広くラインアップすることで、さまざまなユーザー層を獲得しようとしている。しかし当社は、クリエイターのニーズにだけ特化したパソコンを販売するというニッチな市場でシェアの拡大を図る。このため価格競争などに巻き込まれない」と分析。価格は、「競合他社より高くなる」と強気の姿勢だ。05年度は、売上高が5億円で収支均衡を見込むが、06年度は前年度比2倍にあたる10億円の売上高を目指し、黒字化を目指す。

 クリエイターを顧客として獲得すれば、「将来的には、オフィス内のネットワーク構築など、ビジネス領域が広がる」と、ワークステーションの市場投入を検討している。そのために、ソフトウェアメーカーやシステムインテグレータなどとアライアンスを組むことも視野に入れていく考えだ。
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