石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>8.リアプロテレビに注目(2)

2005/05/30 16:51

週刊BCN 2005年05月30日vol.1090掲載

 プロジェクションテレビ(PTV)は以前から「リアプロ」と呼ばれて、大画面を求める一部のユーザーから支持は得ていた。だが、販売店での展示が少ないこともあり、名前は耳にしたことはあっても、その仕組みなど詳細は一般にはあまり知られていない。PTVはライトバルブを組み込んだ光学エンジンを使って、内部で投射した映像をスクリーンに投影する。CRT方式のPTVは大画面だが本体も巨大で、ブラウン管に比べ暗くてフォーカスが甘い。これは本体下部まで達してしまう光学エンジン自体の大きさや投射距離(CRT方式は3眼。それぞれの映像を集結させるためにはある程度の投射距離が必要)が問題していたからだ。また、この光学エンジンの影響で本体自体が大きくなり、日本の住環境には合わなかった。

 だが、近年のマイクロデバイス方式はCRT方式に比べてサイズも半分ぐらいになり、50インチ前後では奥行き40センチとブラウン管テレビよりも薄くなってきている。ところで、このマイクロデバイス自体は10年以上前から存在し、PTVへの応用もデバイス登場当初から考えられていた。ではなぜ、マイクロデバイス方式がこれまで普及しなかったのだろうか。

 その理由は初期のマイクロデバイスにある。画素が粗く、大画面用の表示デバイスとしては不向き。さらに高精細のものは高価で、すでにPTV向けに定着していたCRT方式と比べるとその価格差があまりにも大きすぎた。そのため、マイクロデバイス方式は高価な業務向けの一部機種にしか採用されていなかった。それが近年、高精細なマイクロデバイスの価格がこなれてきたことでPTVへの本格応用が可能になり、軽量・コンパクトになってきたのだ。

 ところで、電化製品からの電磁波問題に関心が集まっている。プラズマテレビは蛍光灯と同じ原理だから、高電圧による放電で発生した紫外線をセル内の蛍光体に当てて可視光(発光現象)を得る方式。当然、電磁波や紫外線が発生し、そしてその量も画面の大きさに比例して増えていく。もっとも、人体に影響の無いレベルなのだろうが、大画面になるほど増加していくのは気持ちの良いものではない。PTVでは画面からの電磁波や紫外線はほとんどゼロなのだ。加えて主要パーツは光学エンジンぐらいなので、本体中身はほとんど空間。軽量で運搬・移動も楽なのだが、処分する際に産業廃棄物が少ないのも見逃せない。PTVは最も人体や環境に優しい大画面テレビといえるだろう。
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