秋葉原物語

<秋葉原物語>[第3部 ムーブメント]29.家電量販の業態変更続く

2005/05/30 16:51

週刊BCN 2005年05月30日vol.1090掲載

 秋葉原地区では、飲食専門ビルがオープンしたり、関係団体が海外の来訪者を増やすことに取り組むなど、秋葉原を盛り上げようという機運が高まっている。最近は、駅前の超高層ビル「秋葉原ダイビル」のイベントスペースでITメーカーやベンチャー企業などが記者会見やユーザー向けのセミナーを開催するなど、秋葉原がITの情報発信基地になってきた。

 そんななか、家電量販店やパソコン専門店が各店舗の業態を変更する動きが出てきた。大手家電量販店の石丸電気では、JR秋葉原駅電気街口から徒歩2分のデジタルカメラ専門店「AKIHABARAデジカメ館」を5月21日にリニューアル、中古DVDソフト買い取り専門の「ISHiMARU SOFT 買取本舗」としてオープンした。

 中古DVDソフトは、買い取れるタイトルが多く、DVDソフトのコンテンツ次第では高額で販売できるという利点がある。一方、デジタルカメラはコンパクトモデルが成熟期に入りつつあり、新品の利益率が下がっている。そのため、駅前立地という好条件を生かし、買取専門店に仕上げたという。

 しかし、カメラ量販店のヨドバシカメラが今年9月、JR秋葉原駅前の都市再開発地区に超大型店をオープンすることも業態変更の要因とする見方もある。デジカメ専門店として構えていては、カメラの品揃えが充実しているカメラ量販店と真っ向から勝負することになるためだ。

 事業の撤退を視野に入れた動きもある。ラオックスは、秋葉原電気街で最大級の中古パソコン専門店「PCEXPOT秋葉原本店」を中古サプライ品、ジャンク品などの専門店「サプライアウトレット」に業態変更した。中古パソコンを閉店したのは、同社のなかで中古ビジネスを拡大路線に乗せるかを検討するため。「中古パソコンを拡販するには、ビジネスを拡大していくための体制を整えなければならない」(ラオックス関係者)というわけだ。

 ほかにも、業績不振を理由に閉店する小規模店舗が多い。電気街のショップがリニューアルしたり、見切りをつけて撤退したりするのは、電気街が“生きている証拠”ともいえる。しかも、その新陳代謝のスピードは速い。秋葉原地区の急速な変化の波に対応したショップが次々生まれている。

 不採算店舗の業態を変更した各家電量販店にとっては、リニューアル後の業績アップに期待する。しかも、リニューアルが新しいビジネスモデルにつながるきっかけとなれば、秋葉原地区=電気街に新しい動きをもたらすことになる。(佐相彰彦)
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