秋葉原物語

<秋葉原物語>[第3部 ムーブメント]30.根強い“オタク”文化

2005/06/06 16:51

週刊BCN 2005年06月06日vol.1091掲載

 秋葉原電気街で電化製品に次ぐ“第2の文化”として根づいているのが、アニメやフィギュア、DVDソフトなどのエンタテインメント分野。JR秋葉原駅前の都市再開発が着々と進むなか、さらに主流になる雰囲気を醸し出している。

 音楽CDや映画などのDVDソフトに関しては、秋葉原電気街の中央通りに、ヤマギワソフトをはじめ、ソフマップ本店アミューズメント館やメッセサンオー本店などといったソフト専門店が多い。人気アーティストのアルバム発売日や人気が高い映画のDVD発売日には多くの来店者で賑わう。今でも「ファイナルファンタジー」シリーズなどファンが多いゲームの新作の発売ともなれば長蛇の列ができるのは、“秋葉原名物”の1つかもしれない。しかも、今では新品ソフトの販売だけでなく、買取を含めた中古ビジネスも盛んになっている。

 電気街内にあるアニメショップやフィギュア専門店などは、一昔前までは“オタク”と呼ばれるアニメや漫画などに没頭するマニアが来店する傾向が高かった。しかし、年齢層が拡がり、ビジネスマンなどが会社帰りに秋葉原電気街に立ち寄ってフィギュアショップに来店する風景も珍しくない。アニメや漫画を子供の頃に楽しんだ人は多い。特に男性はラジコンや「機動戦士ガンダム」などのプラモデル、鉄道模型に凝った経験をもっている場合もある。こうした層が子供の頃の楽しみをそのまま引きずりながらショップに来る。子供の頃に比べたら、リッチに買物を楽しめるようになって。

 エンタテインメントを求める顧客の購入意欲を獲得すれば、大きなビジネスチャンスにつながる。野村総合研究所(NRI)では、好きなことにこだわりを持つ消費者を含めて“オタク”と見た場合の市場は2900億円程度と試算する。

 パソコンなど情報関連機器におけるニーズに合った商品やサービスは、多少高くても購入者の値ごろ感を満足させるケースが多い。趣味・嗜好のエンタテインメント分野であれば、なおさら金に糸目を付けずに購入する客が多いのではないだろうか。

 電気街のメイン通りである中央通りの一角は、「エンタテインメント地域」としても名高くなってきた。ホビーやゲーム関連ソフトなどのサブカルチャーをメインカルチャーに変え、それをビジネスとして定着させる動きも活発になってきたというわけだ。

 パソコン本体や薄型テレビなど情報関連機器一辺倒からエンタテインメント系ソフトを扱うショップが集まることは、集客力を高めるアイテムとして一般化する可能性を十分に秘めている。(佐相彰彦)
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