全国ショップ激戦図

<全国ショップ激戦図>79.埼玉県越谷市(中)

2005/06/06 18:45

週刊BCN 2005年06月06日vol.1091掲載

 郊外型の家電量販店がマーケットシェアを高めるには、カメラ量販店など駅前型のショップが出店していない地域に店を構えることが戦略の1つとして挙げられる。

競合店を逆利用し販売増へ

 埼玉県越谷市は、東武伊勢崎線の越谷駅や千間台(せんげんだい)駅など主要な駅前に量販店が出店していない。しかも、県内で上位5位に入る人口を抱える。埼玉県のシェアを伸ばすには絶好の地区だ。いかに商圏を拡げるかが郊外店が集中する場所で勝ち抜くカギになってくる。

 越谷市で各主要量販店がシェア増に向けて戦略的に出店しているなか、目立った動きを見せているのがコジマだ。同社は、2003年12月に「NEW越谷店」を国道4号線と県道48号線が交差する南荻島交差点に出店。交差点という好立地を利用して競合店よりも商圏を拡げることで差別化を図っている。来店者が国道4号線と県道48号線の両方から車を出入りできる駐車場を設けており、来店者を集める要因になっている。

 03年以前は、現在の店舗より800メートル離れた位置の国道4号線沿いに店を構えていた。しかし、交差点での出店でなかったことに加え、現状よりも小規模店で駐車場の収容台数も少なかったことから、安定した売上増が見込める顧客を獲得し切れていなかった。〝地域1番店を目指す〟コジマのコンセプトを遂行するため、起死回生を図った店舗の移転と売り場面積の拡大で、競合店を凌駕することになった。

 家電量販業界トップのヤマダ電機にマーケットシェアを奪われないための策も講じている。さいたま市岩槻区に出店している「岩槻店」は、コジマにとって小型店に位置付けられるものの、来店者を増やしている。これは、ヤマダ電機が近くに大型店「テックランド岩槻店」をオープンしていることを逆手にとった戦略。

 つまり、ヤマダ電機のテックランド岩槻店に来店する顧客が価格差や品揃えを比較するためにコジマの岩槻店に訪れることを予想して店舗を構えている。コジマ店舗での価格商談は「他店よりも安くします」がキャッチフレーズ。同じ商品であれば競合店よりも価格を下げることになる。

 しかも、来店者が欲しい商品が岩槻店になかった場合は、岩槻店から車で10分程度のNEW越谷店への誘導も行う。本来、半径3キロメートル以内といった近隣にあるショップは、顧客の奪い合いが生じる危険性がある。ところが、コジマのNEW越谷店と岩槻店は、近くにヤマダ電機が出店していることで、ドミナント(高密度多店舗展開)戦略が上手く機能しているようだ。(佐相彰彦)
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