大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>65.iPod Touchが示す進化の方向性

2007/09/17 18:44

週刊BCN 2007年09月17日vol.1203掲載

 アップルが、iPod TouchをはじめとするiPodシリーズの新製品を発表した。

 これまで累計1億1000万台の出荷実績を持つ、大型商品のラインアップ一新のニュースは、世界中のiPodユーザーおよび業界関係者の注目の的となった。

 なかでも注目されたのが、iPod Touchである。

 iPhoneで採用した指によってパネルを操作するマルチタッチインターフェースを採用。直感的な操作で利用することができる。

 これを見て、世界の多くのメディアは、「iPhoneから電話機能を取り除いたiPodの登場」と表現した。確かに、外観や特徴的なインターフェースの採用など、iPhoneと同一機能を搭載している点からはそう見えるだろう。

■iPod TouchとiPhoneは別物

 だが、アップルでは、iPhoneとiPod Touchは、まったく別のコンセプトで開発されたものだとアピールする。

 米アップルのiPodプロダクトマーケティング担当シニアディレクターのスタン・イング氏は、「iPod Touchは、iPhoneから電話機能を取り外した製品ではない」と前置きし、「音楽や映像、写真をより楽しんでもらうためには、指で画面をタッチして使うことが可能な、このインターフェースを採用することが最適だと判断した。あくまでも音楽を聞く、映像を見る、写真を見るといった、メディアとしての進化の上で採用した機能」と語る。

 iPodシリーズとしては初めてiPod Touchに搭載したWi-Fi(無線LAN機能)も、メディアとしての進化には不可欠な機能だったためと言い切る。

 「動画や音楽を楽しむためのメディアとしての進化を図ったのが今回のiPod。700万を超える動画を持つYouTubeや、新たに提供するiTunes Wi-Fi Music Storeで楽曲の検索や視聴、購入するには、Wi-Fi機能が不可欠となる。そして、ブラウザを搭載したのも、iPodでブラウジングをすることを本来の目的としたわけではなく、家庭やオフィス以外の場所で、Wi-Fiに接続する際には、パスワードや名前を入力する必要がある。そのためにはブラウザを使用しなくてはならない」

 カメラやマイクを搭載しなかったり、住所録機能を組み込まなかったのもiPod Touchがメディアとしての進化を目指したものであることを裏づける。

■利用範囲が広がる可能性

 だが、その一方で、ユーザーの利用範囲が、アップルの思惑とは異なるところにまで広がっていく可能性がある。

 iPod Touchのブラウザ機能を使うことで地図を表示しながら持ち歩くといったモバイル端末としての使い方、ウェブメール機能を使ったメール端末としての活用。周辺機器を接続すれば、Skype端末やIP電話端末としての利用も可能性は捨てきれない。

 オーディオプレーヤーからビデオプレーヤーに発展したiPodは、今回、新たな進化への一歩を踏み出したことになる。

 その方向は、ユーザーがWi-Fi機能をどう生かすか、ブラウザをどう使うか、そして、マルチタッチインターフェースをどう利用するかによって決まってくるのではないだろうか。
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