大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>74.ソフトバンクの「アジアNo.1ネット企業」宣言

2007/11/19 18:44

週刊BCN 2007年11月19日vol.1212掲載

 「ソフトバンクは、日本で第3位の携帯電話会社ではない。アジアNo.1のインターネット会社が最近になって、日本で携帯電話事業を開始した。そう捉えるのがソフトバンクの正しい見方」──。

 ソフトバンクが11月6日に開催した2007年度上期連結決算の発表会の席上、孫正義社長はこう表明した。

■20億円の投資が2.9兆円に

 この日、ソフトバンクが出資するアリババが、香港で上場した。会見の最中に、終値の情報が孫社長のもとに入る。「円に換算して、約1兆円の公募を行ったところ、最終的に2.9兆円になった」と語り、さらに、「アリババは、世界で最も成功したBtoBモデルの会社。これを日本に持ってくる。当社の過半数の持ち株比率で、アリババ・ジャパンの設立を準備している」ことを明らかにした。

 ここ1年余り、ソフトバンクの話題は、携帯電話事業に集中した。だが、今回の上期決算説明会では、かなりの時間をアリババの話に割いた。

 「アリババには20億円を投資した。それが2.9兆円になった。しかも、今回のアリババの上場はBtoB部門だけ。私個人は、アリババの傘下にあるネットオークションのタオバオ、ネット上での支払いを行うアリペイのほうが潜在的価値が大きいと認識している。これは、まだ未公開のままであり、投資した20億円すべてが顕在化したものではない」と、中国の高い成長力を背景にした投資成果と、今後の成果のほうがより高いことを強調する。

 タオバオには、日本のヤフーオークションの10倍もの商品が出品され、その決済のほとんどがアリペイで行われているという。

 「アリババ+ヤフージャパンの組み合わせによって、アジアNo.1のインターネット企業になった」と、孫社長は、その言葉をスクリーンに大写しにして見せた。

■ネットが地盤の携帯電話へ

 かつてのソフトバンクは、米国のネット関連ベンチャーに投資し、そこで回収した資金を日本のネット関連ベンチャーに投資した。米国と日本の時差を利用したものであり、これが、孫社長のいう「タイムマシン経営」である。今度は、日本で回収した資金を、中国のネット関連ベンチャーに投資するという構図だ。

 シェアは第3位にとどまっているとはいえ、6か月連続で純増数1位になったことで、携帯電話は着実に成長を遂げている。今回の発言は、そこで、改めてインターネット事業に軸足を置く方針転換のようにみえなくもない。

 しかし、アジアNo.1のインターネット企業を強調した背景には、むしろ、10年戦略とする携帯電話事業を強く意識したものであることが見え隠れする。

 「これまでの携帯電話はボイスマシン。しかし、今後は、インターネットマシンに進化する。ソフトバンクは、携帯電話の後追い企業ではなく、インターネットの世界からやってきた企業。インターネットのノウハウ、技術、土地勘を使って、携帯電話事業を行っている」と語る。

 インターネット企業だからこそ、携帯電話でトップシェアを狙えるというのが孫社長の持論。地盤を作ったこれからが、いよいよ本領発揮ということになるのか。
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