店頭流通

薄型テレビの動向とメーカー別勢力図 小型に強いシャープ 大型は松下に軍配

2008/06/09 16:51

週刊BCN 2008年06月09日vol.1238掲載

32V型で下げ止まりの兆候見える

 北京オリンピックを直前に控え、テレビメーカーは各社とも「特需」を見込んだ薄型テレビの最新モデルを投入している。一方、価格の下落は各サイズで進んでいるものの、下げ止まりの兆候も見え始めた。そこで、「BCNランキング」を基に画面サイズを軸にした人気モデル動向や価格推移をまとめながら、サイズ別のメーカー勢力図を描いてみた。

■売れ筋サイズは32-37V型
 個室・1人暮らし用の20V型も順調

 まず、液晶テレビやプラズマテレビ、有機ELテレビなども含めた薄型テレビ全体で、サイズ帯別の売れ筋動向を見てみよう。2008年4月の1か月間で販売台数シェアが最も高かったのは、人気の32V型を含む30V型台となっている。このサイズ帯だけで全体の40.1%を占めているのだ。

 次いで多いのが20V型台で、シェア29.7%を占めた。20V型台は個室や1人暮らし用として購入されるケースが多く、新生活のスタート期である3-4月は販売台数が伸びる傾向にある。また、1.3%を占める10V型未満のクラスは、ワンセグテレビなどを中心とするポータブルタイプが多い。

 一方、大型モデルでは40V型台が17.4%、50V型以上は2.5%となっていて、合算すると約2割を占めている。オリンピックイヤーとなる今年は、「大画面で観戦したい」というニーズが高まり、このクラスが大きく伸びることも予想される。

■30V型台は激戦区
 シャープ以外のメーカーも健闘

 次に、5月第1週(5月5-10日)の週次データで、一番人気の32V型を擁する30V型台を見てみよう。トップ10では32V型、37V型が5モデルずつランクインしている。1位はシャープの32V型モデル「LC-32D30-B」で、シェアは8.9%。なお、20V型台で1位の「LC-20EX3」は15.3%と2桁のシェアを獲得できているが、30V型台では1位でもシェアは1ケタ。競争の激しさを物語っている。

 「LC-32D30-B」の解像度は1366×768のハイビジョン対応、輝度は450cd/m2、コントラスト比は1500:1。地上・BS・110度CSデジタルチューナーも搭載するほか、「AQUOS ファミリンク」にも対応している。2位はシャープの37V型モデル「LC-37DS3-B」で、シェアは6.6%。解像度は1920×1080のフルハイビジョン(フルHD)対応で、輝度は450cd/m2、コントラスト比は2000:1、視野角度は176度。

 液晶テレビが上位を占めるなか、5位には松下電器産業の37V型のプラズマ「TH-37PX80」がシェア4.1%でランクインした。解像度は1024×720で、コントラスト比は15000:1。

■平均価格が上昇に転じた32V型
 下げ止まりの兆候か?

 薄型テレビ全体のサイズ別で、メーカーの勢力図(販売台数シェア)を見てみよう。

 全サイズの合計販売台数ではシャープが41.1%で1位。2位がソニーで19.4%、3位は松下で15.4%、東芝は10.4%で4位だった。

 20V型クラスで過半数のシェアを獲得したのはシャープで、51.9%だった。以下、2位はソニー21.2%、3位は松下10.9%だった。

 30V型クラスでも、1位はシャープで42.1%。続く2位は東芝だが、シェアは17.3%で1位と大きな差がついた。3位はソニーの16.1%、4位は松下で13.7%と健闘している。

 ひとまわり大きいサイズの40V型クラスでは、ソニーが頭角を現し33.2%で首位を獲得した。2位はシャープで30.3%、3位は松下の19.3%だった。

 50V型以上の大型サイズの勢力図はどうか。1位はプラズマにも強い松下が獲得。シェアは47.4%だった。2位はシャープで32.4%。なお、日立製作所は20V型クラスではシェア0.4%と控えめだが、30V型台、40V型台・50V型以上それぞれ7%を超えるシェアを確保している。

■20-30型台ではシャープが強い
 40ではソニー、50以上では松下

 32V型、37V型、40-42V型の07年7月から08年4月までの税別平均価格推移を見てみよう。「1インチ1万円」といわれたのも今は昔。3年前に比べ半額ほどまで価格が下がっている。

 32V型、37V型、40-42V型とも、07年夏から緩やかに価格が下がり続け、07年末商戦期には32V型で10万6000円台までになっていた。ところが、今年に入って下落率はやや緩やかに変わってきた。特に、32V型モデルの08年4月の平均価格は08年1月と比べると逆に約4000円も上昇しているのだ。各社が投入した新モデル効果によるものと推測される。

 一時的とはいえ、平均価格の上昇は珍しい現象。どこまでも下がり続ける印象が強かった薄型テレビだが、原油高を始めとする材料費の上昇もあり、ボリュームゾーンの32V型からそろそろ下げ止まりの兆候が出始めているようだ。(山下彰子)
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