大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>114.国産勢はネットブック市場に参入するのか

2008/09/22 16:51

週刊BCN 2008年09月22日vol.1252掲載

 ネットブックをはじめとする低価格ノートPCの勢力が拡大している。BCNランキングによると、2008年8月における6万円未満の低価格ノートPCの販売台数構成比は、ノートPC全体の19.9%となり、5台に1台を占める結果となった。また、10インチ以下の液晶ディスプレイを搭載したミニノートの構成比は、ノートPC市場全体の20.3%。とくに8月の最終週となる25-31日の集計では、25.4%に達し、4台に1台がミニノートという結果になったのだ。

外資系が市場をリード

 市場をけん引してきたのは、アスース(ASUS)の「Eee PC」。8月における10インチ以下の液晶ディスプレイを搭載したミニノートのうち、52.1%のシェアとなっている。さらに、6月には、日本ヒューレット・パッカードが「HP 2133 Mini-Note PC」を投入。世界的な需要のひっ迫で、毎月数千台という限られた出荷台数のため、直販サイトではわずか半日で売り切れるという状況が続いている。シェアの上昇という形にはなかなかつながらないが、9月からは月1万台の出荷が予定されているだけに、勢力図への影響が注目されるところだ。

 8月23日の発売以来、台風の目となっているのが、日本エイサーの「Aspire one」である。シェアは発売日を含む8月18日から24日の集計では49.4%。続く25-31日の集計でも54.2%となった。

 9月にはデルが「Inspiron Mini 9」を投入し、10月にはレノボがミニノート投入を予定する。メーカー間の戦いは熾烈化しそうだ。

 このように、低価格ノートPC市場をリードしているのは、いずれも外資系メーカーである。

 国産PCメーカーでは、工人舎が10インチ以下の液晶ディスプレイを搭載したノートPC市場で、8月には10.0%と2ケタのシェアを獲得し、3位に入っているに過ぎない。大手PCメーカーはまだ静観しているところだ。

一過性か主流かの見極め

 しかし、参入に向けた準備は着々と進んでいる。例えば富士通は、欧州市場向けとして、8.9インチの液晶ディスプレイを搭載した「Amilo Mini Ui 3520」を発表。台湾、韓国市場向けにも販売する計画を明らかにしている。

 日本市場への投入は、「来年1月以降になるだろう」(富士通)とする一方で、「国産PC各社の動向を見て、投入時期を判断することになりそうだ」と、前倒しでの投入も視野に入れた準備を進めていることを明かす。

 一方、2010年に年間1000万台のPC出荷を目標に掲げるソニーは、「09年度には、ネットブックと呼ばれる領域の製品投入は避けては通れないだろう」と、市場参入に前向きな姿勢をみせる。NECや東芝でも、異口同音に「低価格帯の小型軽量ノートPCについては検討している」とコメントする。

 ソニーのように新興国でビジネスを拡大させている国産PCメーカーにとっては、ネットブックは魅力的な製品といえるが、日本や先進国を対象にビジネスをしているPCメーカーにとっては、これが一過性のブームなのか、それとも今後の主流の一翼を担う製品になるのかを慎重に模索している。いずれにしろ、投入時期を逸しない判断が求められる。
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