大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>116.新リセラー制度で販売拡大の地盤築くアップル

2008/10/06 16:51

週刊BCN 2008年10月06日vol.1254掲載

 アップルの勢いが止まらない。米アップルが発表した2008年度第3四半期(4-6月)の売上高は、前年同期比38%増の74億6000万ドル、純利益は32%増の10億700万ドルと大幅な伸びとなった。

業績は過去最高を更新

 世の中の注目は、iPhoneやiPodに集まっているが、同社の発表によると、同四半期におけるマックの出荷台数は前年同期比41%増の249万6000台。マック本体が大幅な伸びを見せているのである。

 これは、同四半期だけの特殊要因ではない。第2四半期(1-3月)には前年同期比51%増の228万9000台、第1四半期(2007年10-12月)には同44%増の231万9000台、07年度第4四半期(7-9月)も同34%増の216万4000台と、いずれも過去最高を更新し続けているのだ。

 米ガートナーが発表した2008年第2四半期(4-6月)の米国市場におけるPC出荷台数では、アップルは前年同期比38.1%増の139万7000台、シェアは8.5%と、3位に躍進している。

プレミアム・リセラーを展開

 この動きは、日本でも同じである。BCNランキングによると、8月におけるマックの販売台数は、対前年同月比36.6%増となり、昨年8月に新iMacを発売して以来、これで13か月連続で2ケタ増という高い成長率を維持している。

 Leopardに標準搭載されているBootcampによって、マック上でもWindowsが動作するようになったことで、Windowsユーザーの購入が増加していること、同じCPUを搭載したWindows PCよりも、マックのほうが安いことなどが影響して、販売台数が増加している。

 そして、マックの販売台数拡大で見逃せないのが、販売ルートの拡充に静かに乗り出している点だ。現在、国内に直営店の「アップルストア」を、東京・銀座など全国7店舗を持つほか、ビックカメラをはじめとする量販店との協業によるショップ・イン・ショップ形式の「アップルショップ」を全国に17店舗出店している。

 アップルショップは、アップルストアと同じ什器を使用し、専門知識を持った店員が対応する店舗である。Windows PC売り場のすぐ横でマックを比較購入できるという点でユニークな存在だ。Windowsからマックへの乗り換え、買い増しを訴求する場としても効果を発揮している。

 さらに、今年7月には、東京・武蔵村山のイオンモールむさし村山ミューに、日本初のアップル・プレミアム・リセラー店として、ノジマ直営の「YCAC」をオープンした。

 アップル・プレミアム・リセラーは、販売店との協業により展開する独立店舗型のアップル専門店で、店舗内には、全世界共通となるプレミアム・リセラー専用の什器を使い、セミナーなどが行えるスペースを併設している。

 同リセラー店は、英国、フランス、ドイツ、スペインなどの欧州地域のほか、ロシア、オーストラリアなどに約400店がある。こうした専門店の積極的な拡充策も、アップルのシェア拡大につながっているのだ。

 一時は販売ルートの開拓には慎重だったアップルだが、いまや、国内でのシェア拡大に向けた地盤づくりを、静かに、そして着実に進めている。
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