地図サービスは、デバイス間の連携に向けた模索や平面から3D化の動き、拡張現実(AR)研究が進展し、新たなサービスが続々と登場しており、巨大な産業として成長しつつある。ただ、ベンダー各社の思惑はさまざま。次世代サービスの提供に向けて各社が準備を進めている段階だ。

各社の姿勢の違い鮮明に

 まずは、地図サービスベンダーのスタンスや戦略についてみてみよう。

ゼンリンデータコム

ゼンリンデータコム 藤沢副社長
 ゼンリンデータコムは個人向けサービスで、PC向け地図ソフトと携帯向けサービス、地図検索サイトの三つを揃える。メインは携帯向けで、「全体の半分くらい」(藤沢秀幸副社長)の売り上げを占める。同社は地図情報の整備を進め、三次元地図の作成に注力している。自動車や電車、徒歩などの交通手段に加え、雨天時などシチュエーションに応じたルート調査で、公園やビルの中、路地裏なども対象。建物設備の調査も実施している。「まずは情報の整備・取得からで、ARについてはそれから。一社の取り組みだけでは難しいので、メーカーやサービスプロバイダなどと連携が必要だ」(藤沢副社長)と業界を横断した取り組みの必要性を説く。

インクリメントP

インクリメントP 山根マネージャー
 インクリメントPの山根昌彦・サービスプラットフォーム事業本部第二企画制作部営業企画グループマネージャーは、「おでかけ支援サービスを掲げ、徒歩でのおでかけ支援サービスを充実させる。精度よりも新鮮さがより重要だと考えている」と語る。カーナビ向け事業が中心で、地図データ整備のために全国で車両が通行できる道路すべての走行調査を実施している。他社との協業で、海外地図や三次元地図の整備も進めている。パスコとキャドセンターの2社と共同で整備する三次元地図「MAPCUBE」は、その一環だ。そのほかサーバーから常に最新の情報を配信したり、地図の拡大縮小、回転、3D表示をしたりできる「iフォーマット」の技術を普及させる「iフォーマットフォーラム」をカーナビメーカーと設立。協業体制を強化している。

ナビタイムジャパン

ナビタイム 大西社長
 ナビタイムジャパンは、「場所から場所のトータルナビゲーション」(大西啓介社長)をコンセプトに掲げている。現在は、400万人以上の会員がおり、10代層の開拓を推進。受験生が試験会場などに向かうときにナビタイムを使ってもらい、そのまま継続してもらえるよう取り込んでいく考えだ。屋内でのナビにも力を入れており、2008年には兵庫県で、段差や道幅などを考慮し、車イスとベビーカーのルート案内のために、「IMES」方式を採用した実験を実施した。大西社長は「グループウェアにナビ機能を組み込むようなこともありえる」と、業務アプリケーションとの連携にも関心も示す。「今年後半から力を入れていきたい」(大西社長)方針だという。海外への展開も積極的に推進する構えだ。

地図サービスにARの波

 ARは、続々とアプリケーションが登場し、観光案内やナビへの用途が見込まれている。ただ、ARの商用化に関しては慎重な意見が少なくない。ナビタイムに至っては「ARに対する取り組みはとくにしていない」(大西社長)と消極的だ。

 ARのプラットフォーム技術の開発を手掛けるNECマグナスコミュニケーションズの山崎順一・市場開拓推進部主任は、「ARのコンセプト自体は、リアルの社会のなかにPCなどのバーチャルデータを表現しようとするもので、昔からある」と説明する。応用の形が変わっただけで、電子コンパスやGPSがついた「iPhone 3GS」や「Android」携帯などが登場し、カメラとアプリも同期できるようになったというのだ。

NECマグナス 山崎主任
 NECマグナスでは、PCのスクリーンのなかで特定の画像や文字のリンク先をクリックするように、バーチャルデータをそのままリアル社会に当てはめようとしている。米ジオベクターの特許で、同社が利用している「3D空間検索技術」は、GoogleやYahoo、ゼンリンなどのマスデータのなかから特定のデータやエリアを抜き出すもの。ベースは端末の位置で、ARには方向情報とエリア、カテゴリの情報をパラメータ化して、画像合成する。ただ、「致命的な欠陥がある」(山崎主任)と釘を刺す。検索方法をもとにしたARを実現しようとすると、ユーザーの位置を取得しなければならないが、ターゲットが自分からどれくらいの距離にあるかという情報は、今の携帯からは取得できない。画像のパターン認識から自分の位置を確認することはできるが、パターン認識の画像を偏在させるのは難しいという。

 「AR自体は表現ツールとして有効だ」。山崎主任は、「iPhone 3GS」や「Android」携帯がいつ一般的になるのかが鍵だとみる。ただ、ビジネスモデルの構築という課題もある。「今のところダウンロード販売か広告モデルが検討されているが、どちらも難しい」という。山崎主任は、さまざまなサービスは登場し、市場が活性化することを期待している。