地図サービス産業は大きな変革期を迎えている。単に位置情報を表示するだけではなく、ユーザーの位置に対応した情報を「重層」的に組み合わせて提供するサービスが次々と登場。加えて、デバイス関の連携に向けた模索や平面から3D化の動き、拡張現実(AR)研究の進展もあり、キャリアやメーカー、官公庁を巻き込んだ巨大産業に成長しつつある。

業界全体での取り組みが必須

 政府は、「地理空間情報活用推進基本法」を2007年に施行し、地図情報の整備や、新産業の育成・創出を支援する姿勢を明らかにした。経済産業省は、「G空間プロジェクト」に取り組み、新市場の創出で地図サービス産業の市場規模は、2008年の約4兆円から2013年には約10兆円へと急増するとみている。

 メーカー各社の動きとしては、ゼンリンデータコムがハイビジョンカメラで撮影した全国の地図情報を3次元データに自動生成する方式を採用。インクリメントPは、パスコとキャドセンターの2社と共同で3次元都市データ「MAPCUBE」を構築している。そのほか、ナビタイムジャパンは屋内位置測位に向けてGPSと互換性のある信号を専用の装置から発信する「IMES(indoor messaging system=屋内GPS)」方式の実験を進めている。

 ARに関しては、携帯電話のカメラで景色や街並みを撮影すると、関連づけた情報がライブビュー映像に表示されるというアプリケーションが次々と登場している。iPhoneのセカイカメラはその代表例だ。このほかKDDIの「実間透視ケータイ」やドコモの「直感検索ナビ」などが話題を呼んでいる。

 ただ、ナビタイムジャパンは、「ARに対する取り組みはとくに行っていない」(大西啓介社長)という。インクリメントPも「今はコメントできる状況にない」(山根昌彦・サービスプラットフォーム事業本部第二企画制作部営業企画グループマネージャー)としており、メーカー各社の姿勢はさまざまだ。

 根本的なところでは「ビジネスモデルをどうするのか」(ゼンリンデータコムの藤沢秀幸副社長)という問題提起もなされており、「IMES」の専用装置を誰が設置し、管理するのかという課題はその一つ。藤沢副社長は「業界全体での取り組みが必要だ」と訴える。ハードに限らず、ぐるなびや楽天トラベルなどコンテンツの連携も加速しており、地図サービスは広がりをみせ始めている。ただ、いまのところ各メーカーは仕込みの状態といった段階にある。キャリアやメーカー、政府は、次世代サービスに向けて取り組みを開始したばかりで、市場の「創出」には、まだ時間がかかりそうだ。(信澤健太)