このコーナーでは、店頭販売に注力するメーカーの販売第一線の動きを紹介する。(前編)では各社の販売戦略や体制を、(後編)では現場の奮闘ぶりを追う。
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大熊達之 量販部営業一課係長 |
キングジムは、1988年のラベルライター「テプラ」発売をきっかけに、販路として家電量販店を開拓。そして、08年12月のデジタルメモ「ポメラ」のヒットを機に、売り場面積の拡大を図った。
大熊達之量販部営業一課係長は、00年に文具ルート担当から家電量販店担当に異動した。異動当初は、文具ルートとは異なる家電量販店の商談スタイルに右往左往する苦い経験もあった。新製品を理解してもらえれば取り扱ってもらえた文具店に対し、家電量販店では開発コンセプトやターゲット、売り方までの説明と、売れる根拠の提示が求められた。しかし、本部や売り場の店員との交渉を重ねるなかで、ノウハウを蓄積。「営業担当として視野を広げることができた」という。現在は、本部商談以外は店舗を回り、売り場の状況を把握することに努める毎日だ。
こうした日々のなかで「ポメラ」がヒットする。ある販売店では、競争率が高い一等地を確保できた。ポメラの人気が落ち着いたとき、販売店からはコーナーの縮小を迫られたが、担当の店員が上司との板挟みになりながら「この場所は死守しよう」と後押ししてくれ、ことなきを得た。
その店員になんとか恩返ししたいと思っていた大熊係長の救世主となったのが、10年8月発売のデジタル名刺ホルダー「ピットレック」のヒット。コーナーは再び活気を取り戻し、胸をなで下ろしたという。
現在、同社は「ピットレック」や卓上メモ「マメモ」など、「ポメラ」に続く電子文具を「ビジネスツール」売り場として提案し、拡販に力を注いでいる。課題は、都市型店に加え、地方の店舗での展開だ。ポメラで開花した電子文具を武器に、キングジムの挑戦は続く。(田沢理恵)

ビックカメラ有楽町店本館5階の電子文具コーナー