デジタルトレンド“今読み先読み”

夏商戦に期待がかかるウルトラブック メーカー各社が相次ぎ発売

2012/06/21 16:51

週刊BCN 2012年06月18日vol.1436掲載

 インテルが提唱するノートパソコンの新カテゴリ「ウルトラブック」。軽量・コンパクトでスタイリッシュ、しかも高性能というウルトラブックは、家電量販店にとって、今一つ目玉商品に欠ける感のある今年の夏商戦を活性化する商材として期待が寄せられている。パソコンメーカー各社が夏商戦に向けて相次いで発売している新製品から、夏以降を占う。

「COMPUTEX TAIPEI 2012」で注目を集めたウルトラブック

主要メーカーすべてが出揃う 店頭には多様なモデルが並ぶ

 昨年秋、ウルトラブックに先鞭をつけたのはASUSTeK Computer(ASUS)やエイサーなどの台湾メーカーで、すぐに東芝やレノボなどが続いた。今年に入ってからは、春にデル、ヒューレット・パッカード(HP)、富士通が参入、夏にはNECやソニーが名乗りを上げた。夏商戦では、主要なパソコンメーカーの製品が出揃うことになる。

 参入メーカーが多くなったことから、モデルも多種多様になった。価格と性能のバランスのいいASUS「ZENBOOK」やエイサー「Aspire S3」をはじめ、薄さと軽さを徹底的に追求した東芝「dynabook R631」、13.3型液晶を搭載しながら13型ノートよりコンパクトなデル「XPS 13」、天板やタッチパッドなどにガラス素材を採用したHP「HP ENVY14-3000 SPECTRE」などが店頭に並んでいる。最近では、レノボが価格8万円を切った「IdeaPad U310」を6月5日に、富士通が「LIFEBOOK UH75/H」を6月7日に、ソニーが「VAIO」シリーズ初の「VAIO T」シリーズを6月9日に発売。NECは、重量が999g以下の「LaVie Z」を夏商戦に合わせて投入する。

 パソコン専門店も、ショップブランドでウルトラブックを展開している。ユニットコムは、SSDとHDDの両方を搭載して高速起動と大容量を実現しながら価格を5万円台に抑えた「Lesance NB S3431/L」を発売し、ヘビーユーザーから好評を得ているという。サードウェーブは、ドスパラで「Prime Note Altair F-5E」を6月4日に発売した。ユーザーにとっては、デザインや価格、使い勝手などで自分に適したウルトラブックを購入できる環境が整ったことになる。


薄さと軽さ、高性能を訴求 買い控えの払しょくがカギ

 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で、ノートパソコンに占めるウルトラブックの販売台数構成比をみると、昨年11月に1.8%で立ち上がり、12月は2.3%、今年1月は1.8%。2月に再び上昇し3.4%となったが、3月に2.8%と下がり、4月に3.5%と盛り返したものの、5月に3.0%にダウンした。一進一退を繰り返してきたウルトラブック。家電量販店にとっては、各社の魅力的なモデルが揃ったこの夏が販売の正念場となるのだが、ここで懸念材料も出てきている。それが、10月に発売されるといわれているマイクロソフトの新OS「Windows 8」の存在だ。

 この夏商戦で投入されているウルトラブックは、Windows 8が発売されたときに1200円で手に入れることができる優待購入プログラムに対応しているが、いかんせん、Windows 8の特徴であるタッチ操作に対応する液晶ディスプレイを搭載していない。これを理由に購入を待つユーザーが出てくる可能性があるのだ。家電量販店が夏商戦でウルトラブックを目玉にするためには、たとえWindows 8発売前であっても、デザインや機能面で申し分ない「ウルトラブック」本来の魅力をいかにアピールすることができるかがカギを握る。

 台湾・台北市で6月5日から6月9日まで開催されたアジア最大のIT総合展示会「COMPUTEX TAIPEI 2012」では、ウルトラブックが大きな注目を集めた。展示モデルの多くはインテルの最新CPU、第3世代超低電圧版Core iシリーズを搭載し、Windows 8のタッチ操作にも対応。新しいCPUやOSの搭載で、ウルトラブックは進化を遂げていた。しかし、これがいつ、どの程度の価格で、どんな使い勝手をもって登場するかは未知数。この夏の販売では、価格を含めたメリットをきちんと提案し、パソコンの買い替え・買い増しの意味をユーザーにいかに理解してもらえるかが、重要になってくる。(佐相彰彦)
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