これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Natureの創業者・塩出晴海氏」を取材しました。
テクノロジーと自然への愛着
自立したエンジニアとして生きる父の背中を見て育ち、10歳で起業するビジョンを持った。13歳のときには独学で「スペースインベーダー」に似たゲームを開発するなど、テクノロジーの世界に魅力されていく。もう一つ、幼少期を過ごした山と海が身近な広島・向島で芽生えたのが、自然への愛着だ。その思いを強くしたのは就職前の3カ月間、父とヨットで過ごした洋上生活での経験。風とヨットが呼応するリズムにかつてない心地よさを覚え、自然との共生が人間のあるべき姿だと実感した。
クリーンテック市場への確信
就職先の三井物産では希望したユビキタス事業部に配属されたものの、入社後すぐに部署が廃部。「ビジネスをするなら時代のニーズが顕在化していなければいけない」と感じた。そこで自分の感性にも合う“クリーンテック”をテーマに定めた。まだマーケットは未成熟だったが、必ず成長すると確信し、転属した電力事業部で研鑽を積んだ。三井物産退社後は、海外でのネットワークを強化するためにバーバード大学の経営大学院に入学。同時にNatureを創業し、学業と事業の二足の草鞋で奔走した。
家電操作からエネルギーマネジメントへ
約2年の開発期間を経て完成したスマートリモコンを米国でクラウドファンディングに出品したところ、反応は上々。日本での売り上げが大きかったため、MBA課程修了後に米国から日本に拠点を移した。当時はスマートスピーカーの黎明期で、相性の良かったスマートリモコンは飛ぶように売れた。家電操作にフォーカスした戦略をとってきたが、ここ数年でクリーンテックへの注目度が高まり、現在はエネルギーマネジメントを軸にした製品やサービスの展開を開始。見据えるゴールははるか先だが、そこに至る道筋は見えてきた。
プロフィール
塩出晴海
1983年生まれ。2006年に北海道大学工学部電子工学科を卒業。08年にスウェーデン王立工科大学でコンピュータサイエンスの修士課程を修了。同年に三井物産に入社し、電力事業部でIT事業の立ち上げや電力事業投資・開発などを経験。ハーバード大学の経営大学院在学中の14年にNatureを創業。16年に同大学院で経営学修士(MBA)課程を修了。
会社紹介
スマートリモコン「Nature Remoシリーズ」の開発・製造・販売を手掛け、家電のIoT化と合わせて、エネルギーマネジメントが手軽に行える環境を提供している。現在はNature Remoシリーズを活用した電力事業を拡大させている。