これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「トウキョウアーチザンインテリジェンス・中原啓貴代表取締役社長 Co-fouder CEO 博士(情報工学)」を取材しました。
「稼げる」大学の先生になる
大学で情報工学の博士課程を取り、大学教員として学生の指導とFPGAやAIといった自身の研究を深める中、海外の大学との共同研究を多数経験した。海外では多くの研究者が研究しながら会社を起こし、利益を大きく出していることを目の当たりにした。
一方、国内では大学教員は規定で給与が決まっており「労働に対して対価が見合っていない」と感じることも多かった。「研究した技術を社会に還元しながら、稼げる先生になろう」と、大学教員と経営者という二足のわらじを履く決意をした。
エッジAIで現場の生産性向上
提供するエッジAI技術は、生産現場の効率化に役立っている。魚の養殖現場では、与える餌の量を調整するため、従来は人間がいけすの中にいる魚の数を数えていたが、AIの画像解析によって自動でカウントできるようにすることで、大幅な省力化を実現した。
「IT化やDXが進んでいない分野ほど、技術の導入で高い生産性向上を実現できる」と、顧客企業の課題解決に寄り添った開発を続ける。「論文を書くのもいいけど、せっかくなら世の中の役に立つことをしたい」
研究者が起業するロールモデルに
経営者と大学教員には「どちらも、やりたいことをプレゼンして投資や研究費といった資金を調達するという点では共通点がある」という。出会った海外の研究者は、会社経営も大学の仕事もバリバリこなすエネルギッシュさが印象的だった。自分が後輩研究者や学生らに経営者としての背中を見せることでロールモデルとなり、日本でも研究者が会社を持つのが当たり前になってほしいと展望する。
見据える未来は、自身が研究を進める半導体を自社で使うために開発し、米NVIDIA(エヌビディア)のようにAIの世界で先進的な存在になることだ。日本の競争力向上に、研究と経営両面で貢献を目指す。
プロフィール
中原啓貴
1980年、福岡県出身。九州工業大学大学院情報創成研究科博士課程修了。鹿児島大学助教、東京工業大学准教授などを経て、2023年11月から東北大学未踏スケールデータアナリティクスセンター教授。東工大准教授時の20年にトウキョウアーチザンインテリジェンスを創業。
会社紹介
エッジAI技術の受託開発サービスを提供。データセット構築からハードウェア実装まで、コストを抑えたAI実装を提案する。高い防塵性・防水性が要求される過酷な環境下でも最先端のAI処理が実現可能な堅固なハードウェア技術を持ち、多様な現場に導入されている。