これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Cloudbase・岩佐晃也代表取締役」を取材しました。
市場に求められる事業を熟考
大学4年の秋に起業し、コンシューマー向けのプロダクトをいくつも開発したが、うまくいかない状態が続いた。根っからのエンジニアで、アイデアを思いついたらすぐにコードを書いていたが、先輩起業家の「大きな問いを立てろ」との助言で立ち止まった。
市場に求められるサービスは何なのか。「課題が大きいところに優れた技術を提供しよう」と考え抜いた末、可能性を感じていたクラウドセキュリティの現状を徹底的にリサーチ。法人向けのパブリッククラウドセキュリティSaaS事業に狙いを定めた。
クラウドの健康診断の役割
国内でもパブリッククラウドの利用率は年々上昇しているが、日本では企業内でエンジニアが不足していることもあり、全社横断的なパブリッククラウドのセキュリティ対策が弱いことに課題を感じた。提供するクラウドセキュリティプラットフォームは、複数のパブリッククラウドを一元的に管理でき、医療でいえば定期的な健康診断の役割を担う。特に重要なインシデントを察知し、対処法まで提示するのが特徴だ。
セキュリティを分かりやすく届けるという信念のもと、専門家でなくても対応できるようにサポートする点などが評価され、自動車メーカーなど大手からの採用が相次いでいる。「顧客に価値を提供できたと実感する瞬間が最も熱くなる」
顧客が全力で走れるよう支える
セキュリティは、かけようと思えば無限にコストをかけられる分野だ。しかし、企業の競争力を高めるには、独自の事業を生み出すことに最大限のリソースを割ける体制が必要になる。「できるだけ工数をかけずに、本来業務を全力で走れるように支える」のが顧客から求められる役割だと自認する。
創業以来、事業内容の試行錯誤を続けたが、「諦めるのは簡単だけど、できる理由を紡いできた」と前を向き続けた。グローバルでスタンダードに使われるクラウドセキュリティサービスに成長させることを目指し、チャレンジを続けていく。
プロフィール
岩佐晃也
1996年、愛知県出身。京都大学工学部情報学科在学中の2019年、Levetty(現Cloudbase)を創業。2年間で6回のピボットを経て、クラウドセキュリティ領域に着目。22年にパブリッククラウド向けセキュリティプラットフォームをリリース。
会社紹介
「Amazon Web Services」「Google Cloud」「Microsoft Azure」などのパブリッククラウド利用時のリスクを統合的に監視・管理できるセキュリティプラットフォーム「Cloudbase」を提供。複雑なクラウド構成を独自技術によって可視化することで設定ミスや脆弱性を網羅的に検出し、運用までサポートしている。