これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ベンジャミン・川尻 純代表取締役兼CEO」を取材しました。
「フェアじゃない」と疑問に
大学卒業後にSIerで勤務した頃、下請けにあたる会社のエンジニアと一緒に現場で仕事をしていた。急な仕様変更などきつい要望に振り回されても立場上何も言うことができず、心身共に辛い思いをする彼らを見て「元請け側の自分と同じで技術が好きな人たち。役割が違うだけなのに、フェアじゃない」と疑問を持った。
退職後にインターンとして働いた米国では、「エンジニアは実際にものをつくれる人たちなのですごく評価され、ビジネスサイドとも対等にやり取りしている」と感じた。「本来、こうあるべきだよな」と強く思うようになった。
誠実な会社に
中堅企業などでも経験を積み、「エンジニアを幸せにする会社をつくる」と2017年にベンジャミンを創立。同じ問題意識を持つ共同創業者と意気投合したことがきっかけで、起業の道を選んだ。「誠実な会社に」という思いを込め、社名は花言葉で「信頼」の意味を持つ樹木からとった。
案件のほとんどを元請けとして受託しており、技術選定の自由があり顧客ともきちんと意思疎通ができる。掲げるビジョンは、「技術を誠実に届ける」。例え高価なシステム導入を求められてもそれが顧客のためにならないと思えば、最適な方法で目的を達成できるよう代替案を示す。
一歩目を踏み出した
「例えば『プログラミングができます』だけだと競争は厳しいが、ほかに強みが加わるとエンジニアの市場価値は上がる」と考える。社内の複数のエンジニアグループについても同様に、「今注力する生成AIかもしれないし、システムをつくった後の保守運用に強いグループがあってもいいかもしれない」と組織づくりに取り組む。
国内にいる社員の4分の1ほどは首都圏以外からリモート勤務。コミュニケーションを意識し、社内を開放して飲食する機会をたびたび設ける。離職率は低く「『ここで働き続けたい』と思ってもらえているのかな」と考えるが、事業は「まだやりたいことの一歩目を踏み出したばかり」。仕事を「楽しい」と言ってくれる仲間の姿に励まされる日々だ。
プロフィール
川尻 純
1984年生まれ、長野県出身。早稲田大学理工学部卒業後、大手SIerでSEとして勤務。中堅・ベンチャー企業でPMやCOOなどを経験したのち、2017年にベンジャミンを創立。
会社紹介
2017年創立。システム受託開発のほか、内製化支援なども行っている。クラウドを活用したWebシステムの開発を得意とし、AWS生成AIコンピテンシーを同社のアドバンストティアサービスパートナーとしては国内で最初に取得した。東京の本社のほか、ベトナムにも拠点がある。