家庭用パソコンのリサイクル論議が正念場を迎えている。焦点は、（1）現在、家庭で保有している既販パソコンのリサイクル料を新品販売時に上乗せするかどうか、（2）実施時期──の2点に絞られてきた。パソコンメーカーなどで組織する電子情報技術産業協会（JEITA）は、リサイクルを議論している産業構造審議会（産構審）の場で、従来主張してきた排出時徴収を見直し、「販売時徴収による将来充当企業内資金管理方式」なら可能だと譲歩した。しかし、同審議会において、メーカー以外の委員の多くは、「さらに一歩踏み込んだ施策」を要望しており、今回の譲歩で“落着”するかどうかは微妙だ。

　メーカー側と他の委員側との最大の対立点は、メーカーの本業の仕組みのなかに、どこまで深くリサイクを埋め込むかにある。産構審の議論では、結局、当初目標であった2001年12月までに決着がつかず、「メーカー間の格差、リサイクル費用の圧縮・効率化競争を引き起こす要因を極力排除したい」メーカー側と、「リサイクルが効率よく、かつ担保された形で進行することを主張する」委員側とのギリギリのせめぎ合いが、少なくとも今年度中は続くことになった。

　JEITAは、委員側の「排出時徴収では、メーカーの“言い値”でリサイクル費用が決まり、リサイクルコストの削減を担保できない」という主張を受け入れる譲歩条件として、「販売時徴収による将来充当企業内資金管理方式」を打ち出した。これは、例えば、A製品を販売するとき、将来、A製品が排出され、リサイクルするのに必要な費用を、前もって販売時に上乗せし、この現金を各企業が個別に管理する方式である。

　ところが、JEITAの譲歩案に対し、一部の委員からは、（1）家庭が保有している既販パソコン推定2500万台は、依然として排出時徴収方式が残る、（2）家庭用パソコンの平均保有年数は13.8年であることから、これから10年以上も排出時徴収の仕組みを引きずることになる、（3）13．8年先のリサイクル費用を、今の時点で徴収するなど不可能、（4）以上のことから既販品についても販売時徴収の枠内に組み込み、集めた資金は単年度単位（当期充当方式）で収支を合わせるようにすべき──という意見が飛び出た。

　JEITAは、「既販品のリサイクル費用の実質無料化は絶対に受け入れられない。企業経営の存続に関わる問題だ」と激しく反発。「既販品の無料化」とは、例えば、00年度は、推計で家庭から35万台の排出パソコンが出ている。00年度の家庭用パソコンの販売数は推定600万台であるため、この新品パソコンを販売する時に「35万台分のリサイクル費用」を上乗せして販売するということだ。仮に、こうなったとすれば、メーカーは毎年増え続ける排出パソコンのリサイクル費用を、新品パソコンの販売時に上乗せする形になり、「パソコンの単価は年々高くなる」ことになる。

　既販パソコンが多いNECなどのメーカーと、既販分が少なくかつ新品パソコンの販売量が多いソニーなどとのリサイクル費用の差は2-3倍になるとの試算もある。

　これだけ深い溝を残しつつ、どう着地点を見つけるのか。“条件闘争”を続ける先には、「実施時期」をも各委員の間で「取り引き材料」の1つとして視野に入っている。

　産構審では「02年度中の実施」を掲げているものの、きわめて流動化しつつあると言わざるを得ない。

　循環型社会の実現に向け、われわれコンピュータ業界として、どう貢献できるのか。また同時に、われわれのビジネスへの損失を最小限に食い止め、かつリサイクルを足がかりに、新しい21世紀型のビジネスモデルをどう創出することができるのか。01年は、大きな宿題を残したまま、年を越すことになりそうだ。