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<e-Japanリファレンス>e-Japan重点計画推進で36兆円の生産誘発効果 「ITが経済に及ぼす影響に関する分析」総務省・情報通信経済研究会まとめ
2002/01/28 15:00
週刊BCN 2002年01月28日vol.926掲載
総務省の「情報通信経済研究会」(座長:三友仁志 早稲田大学国際情報通信研究センター教授)は「ITが経済に及ぼす影響に関する分析」をまとめ、1月8日付で発表した。e-Japan重点計画の実施がマクロ経済に与える影響、IT化の進展による消費行動・企業行動の変化などを分析している。この中から、本報告書の目的である第3章の「ITが経済に及ぼす影響に関する分析」の部分を連載で紹介する。
本章では、ITが我が国の経済に及ぼす影響について、マクロ及びミクロの両面から、定量的あるいは実証的な分析を行うこととする。
マクロ的分析としては、前章で整理したITの生産性向上効果に関するこれまでの分析事例の成果を踏まえつつ、ITが経済全般に及ぼす影響を分析する観点から、e-Japan 重点計画の実施に伴う経済効果を潜在成長率、生産誘発、雇用創出及び生産性向上の各面から定量的に分析する。
また、ミクロ的分析としては、IT化の進展が個人の消費行動に及ぼす影響について定量的な分析を試みるとともに、ITの活用がビジネスの仕方や企業組織の変化など企業行動に及ぼす影響について具体的な事例に則して分析する。
(1)e-Japan 重点計画の実施がマクロ経済に与える影響
本節では、ITがマクロ経済に与える影響を分析するため、e-Japan 重点計画の実施に伴う経済効果を推計する。具体的には、e-Japan 重点計画の実施による資本ストックの充実に伴う潜在成長率(注10)の押上げ効果をトランスログ生産関数(注11)を用いて、また、同じくe-Japan 重点計画の実施による生産・雇用への影響をトランスログ生産関数及び産業連関表(注12)を用いて、それぞれ推計する。
(注10)潜在成長率:インフレを加速することなく、資本ストックや労働力を過不足なく活用した場合に達成しうる経済成長率。景気の悪い時には、現実の成長率は潜在成長率を下回り、景気が過熱すれば現実の成長率は潜在成長率を上回る。言い替えれば、潜在成長率は中期的に達成可能な成長率であり、供給面からみた一国の経済力を示す。
(注11)トランスログ生産関数:各生産要素(資本ストック及び労働力)の経済成長に対する寄与度や交差効果(資本ストックと労働力の代替・補完関係)を推計するために用いられる生産関数。
(注12)産業連関表:一定地域において一定期間(通常1年間)に行われた財・サービスの産業間の取引を一つの行列(マトリックス)に示した統計表。
1 潜在成長率の押上げ効果
我が国が引き続き経済的に繁栄していくためには、基本的には、潜在成長率を高めることが必要である。
そこで、e-Japan 重点計画の実施による資本ストックの充実に伴う潜在成長率の押上げ効果を推計したところ、e-Japan 重点計画の実施は、実施しない場合に比べ、2005年において0.5%上昇させるとの結果が得られた。
2 生産誘発効果
e-Japan 重点計画の実施による需要の増加や労働生産性の向上に伴う生産への影響については、同計画の実施に伴うIT関連の設備・機器など生産財の需要がもたらす生産誘発額及び生産誘発係数を産業連関表により推計した(図表25)。
推計の結果、e-Japan 重点計画の実施による生産誘発効果として、2005年において約36兆円の国内生産額の増加が見込まれ、また、同年の生産誘発係数は1.86であった(全産業平均の生産誘発係数は1.65)。
なお、生産誘発係数について付言すれば、例えば、建設業のそれは1.93であり、e-Japan 重点計画に係る推計結果よりも大きい。これは、IT機器製造業をはじめIT産業の場合、電子部品などの多くを海外から輸入しているため、生産・調達・販売活動の大半が国内で行われる建設業に比べ、生産誘発係数が小さくなるものである。海外での生産誘発を含め生産誘発係数を推計すると、e-Japan 重点計画が2.24、建設業が2.06、全産業平均で1.81となる。
3 雇用創出効果
e-Japan 重点計画の実施による需要拡大の雇用への影響について、産業連関表により推計した。
推計の結果、e-Japan 重点計画の実施による需要拡大の結果として、2005年において185万人が見込まれる(図表26)。
4 生産性向上効果
e-Japan 重点計画の実施による労働生産性の向上について、トランスログ生産関数及び産業連関表により推計した。推計の結果、e-Japan 重点計画の実施により、労働生産性は2005年において2.8-3.5%の向上が見込まれる(図表27)。
IT化の推進による労働生産性の向上は、少子高齢化の進展により労働人口が減少する中、我が国が国際競争力を維持しつつ、引き続き経済的に繁栄していくための不可欠の条件である。我が国としては、国際競争力ある新規ビジネスの創出と、生産性の低い分野からより生産性の高い分野へと労働力のシフトを図り、これにより、既存産業の雇用減を吸収していくことが重要である。
そのためには、e-Japan 重点計画などの着実な実施により、ITを活用した新規ビジネスの創出の促進を図るとともに、職種転換者が必要なスキル(職務遂行能力)を獲得できるよう人材育成施策を充実するなど人材の流動化を促進することが必要である。
なお、ITは雇用のシフトのみならず、雇用形態の変化をもたらす。オフィスに出社することなく自宅などで仕事を行うSOHOやテレワークといった勤務形態が普及することにより、これまで就労が困難であった者に対し、個人のライフスタイルにあわせた雇用の機会が提供されることが期待される。
総務省の「情報通信経済研究会」(座長:三友仁志 早稲田大学国際情報通信研究センター教授)は「ITが経済に及ぼす影響に関する分析」をまとめ、1月8日付で発表した。e-Japan重点計画の実施がマクロ経済に与える影響、IT化の進展による消費行動・企業行動の変化などを分析している。この中から、本報告書の目的である第3章の「ITが経済に及ぼす影響に関する分析」の部分を連載で紹介する。
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