中国の複写機市場が活性化している。中国市場に詳しいデータライン・リサーチ・ネットワーク(川口博社長)の調べによれば、複写機大手のリコーが販売・保守網を急拡大させているのに加え、東芝、シャープがシェア拡大に力を入れている。今年の中国における複写機の販売台数は約25万台と言われており、中心的利用者層であるホワイトカラーの増大が販売台数を後押ししている。
情報システムの流通網整備にも期待
■トップを走る東芝、リコーが猛追 データライン・リサーチ・ネットワーク(DRN社)の調べによれば、中国における2002年の複写機の販売台数シェアは、東芝が約17.7%でトップ。これにミノルタの約15.1%、シャープの約16.4%、キヤノン、リコー、ゼロックスと続く。
一般的に、世界市場ではゼロックス、キヤノン、リコーが複写機の“御三家”と言われているが、中国市場では“新御三家”として、東芝、ミノルタ、シャープが台頭している(図1)。

とくに東芝は、積極的な代理店確保策が効果を出し、99年から00年にかけて急伸。シャープも同様に、過去2年間伸びており、今後は東芝とともに2強体制が続くとDRN社では予測する。
一方、複写機大手のリコーも負けてはいない。リコーは00年以降、中国での販売・保守拠点の数を急速に増やしている。DRN社の調べによれば、00年当時のリコーの販売・保守拠点は香港、北京、上海、広州、4都市のみだったが、02年時点では、天津や南京、武漢、廈門、成都、など中核都市20か所以上に拠点数を増やした。
■各社、上海に拠点を設置 各社とも一様に販売・保守網の拡充に力を入れているが、このなかで注目すべきは上海の存在である。00年当時、ベンダー各社は香港などに販売の中心である“販売本部”を置いていたが、02年時点では、いずれも上海に販売本部を置いている(図2)。

川口社長は、「各社が上海に販売本部を移した背景には、中国の世界貿易機関(WTO)加盟など市場環境の整備に加え、上海のホワイトカラー層の増大が挙げられる。複写機は、主にオフィスなどのデスクワークで発生する。1万人の従業員がいる工場と、1万人のホワイトカラーが勤務するオフィス地区とを比べると、明らかに後者の方が複写機に対する需要が高い」と話す。
つまり、複写機の需要は、ホワイトカラー層が多い都市に集中する傾向があり、とくに上海は、香港と同様にホワイトカラー層が増えていることを裏付けている。「中国国内への販売網を構築するうえで、これまで主流だった“香港ルート”よりも“上海ルート”の方が戦略的、地理的に有利」との背景もある。
「日本国内のコピー機の販売台数は約70万台だが、中国はまだ約25万台に過ぎない。人口が日本の10倍ともいわれる中国では、今後の伸びが期待できる」と話す。
■複写機から情報システムへ 
もうひとつ重要な要素は、ディーラー網の整備である。川口社長は、「日本では大塚商会など、複写機やFAXの販売網を基盤に中堅・中小企業の情報システムの構築に結びつけて業績を伸ばした企業が多い。一方、今の中国では、こうした中堅・中小企業向けの情報システムの構築を請け負うシステム販社の数が圧倒的に少ない」と指摘する(図3)。
サーバーやパッケージソフトなど、製品単位での中国向け輸出は増えている。なおかつ中国国内の産学連携などで、最先端のIT技術を駆使したハード、ソフト製品が増えている。
だが、これらの製品を中堅・中小企業向けの情報システムとして組み上げるシステム販社が不足している。中国における複写機のディーラー網のなかから、大塚商会のようなシステム販社が台頭する可能性は十分にある。
一方、「中国では、パソコン販社がシステム販社に脱皮する可能性もある」という。国内では、OA機器からIT機器へとシフトしたが、中国ではOA化とIT化が同時進行しているからだ。
過去20年間、日本企業の中国国内での販売活動は順調とは言えず、「鬼門」(川口社長)とまで評された。
今後は、中国で台頭してくる有力ディーラーとの信頼関係を築き上げることで、販路拡大に結びつく可能性が高まっている。