携帯オーディオプレイヤーの売れ行きが好調である。筆者もその波に乗ってアップルコンピュータの「iPod（アイポッド）」と専用音楽ソフト「iTunes（アイチューンズ）」を使い始めることになった。使い勝手は好調そのものだが、1つ大きな問題が起きた。接続するパソコンへの負荷が重いのだ。その結果、「新しいパソコンが欲しい」という気持ちが高まっている。パソコンの性能が上がり、数年前の機種でも使い勝手に問題がないと考えていたが、iPodがその考えを覆してしまったのである。この経験から断言できる。「携帯オーディオプレイヤーは、間違いなく新しいパソコン需要を喚起する」。（三浦優子●取材／文）

アップルのiPodが起爆剤に

■「あくまでパソコンの周辺機器」

　「新しいパソコンが欲しい！」。

　そう考えるきっかけになったのが、予定に反して、仕事用に使っているパソコンと接続してiPodを使い始めるはめに陥ったことだ。本当は家で使っている古いパソコンを使う予定だったのだが、iPodとこのパソコンはよほど相性が悪いらしく、iTunesで手持ちのCDから曲を取りこんでいる間にハングアップしてしまう。何回もそれを繰り返すうちに、「これは駄目だ」とあきらめざるを得なくなった。

　そこで仕事用に使っているパソコンにiTunesをインストールし、iPodと接続して使い始めたのだが、予想通りたくさんの曲を取りこむことでパソコンへの負荷がかかる。ギガバイト単位でデータ量が増えたのだから当然のこととはいえ、原稿を書くことが目的で使っているパソコンへの負荷は望ましいことではない。

　思わず予定外の考えが頭をもたげた。「新しいパソコンが欲しい」。

　仕事で使っているノートパソコンは、昨年6月に購入したもの。家で使っているパソコンは一昨年12月に購入したもので、インターネットに接続し、ウェブを見て、メールや原稿を書く程度の使い方であれば、何の問題もない。新しいパソコンを購入する必要を感じていなかった。

　しかし、iPodを使い始めると、「音楽専用のパソコンがあったら便利だなあ」という気分になってくる。外付けスピーカーとパソコンをつなげば、簡易オーディオ機器として立派に役目を果たす。外ではiPod、家ではパソコンとiTunesを使って音楽を楽しむ──iPodを使うまでは予想もしなかった使い方が始まっていた。

　元々、アップルでは、iPodを「あくまでパソコンの周辺機器」と位置づけている。パソコンなしでは成立しないのがiPodであり、「iPod mini（アイポッド・ミニ）」のように女性や若者など、パソコンを持っていない顧客層をターゲットにした商品を用意し、マッキントッシュユーザーを拡大することを狙いとしている。

■関連製品も多数登場

　米ヒューレット・パッカード（HP）がiPodの販売を開始する狙いもよく分かる。米国ではコンシューマユーザーを多く持つだけに、iPod販売でパソコン需要拡大につながると判断したのだろう。アップルにとっても、ウィンドウズパソコンはHP、アップルはマックと棲み分けも可能で、好都合なパートナーである。

　今、日本のパソコン市場は苦しい状況にある。企業需要は堅調なものの、コンシューマ需要は新たな製品販売のきっかけを見出せずにいる。特に来年は、マイクロソフトが新OSの発売をしないと今から宣言しているだけに、何とかパソコンの新たな需要を見つけなければならない状況にある。

　新たなパソコン購入のきっかけに、iPodをはじめとした携帯オーディオプレイヤーを結びつけることができないだろうか。すでにソフト、周辺機器、サプライでは販売好調なiPodとの連携を意識した製品が多数登場している。パソコンにも「iPodとの連携に最適」とアピールした機種が出てきてもよいのではないか。

　ご存知の通り、携帯オーディオプレイヤーの売れ行きは好調である。これをパソコン販売に生かさない手はない。