その他
ソニー、「HD World」を打ち出す ハイビジョン戦略でパソコン取り込み
2004/10/25 21:12
週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載
ソニーの幹部が「HD World」という言葉を頻繁に使い始めた。日本では、「ハイビジョンワールド」という言葉に置き換えて話すこともあるが、どちらも同じ意味を持った今後のソニーのデジタル家電戦略の方向性を示す重要なキーワードである。いわば、ハイビジョンによって作り出される新たな映像文化をソニーのデジタル家電戦略の中核にしようという取り組みだ。そして、ソニーは、HD Worldの実現に向けて、今年夏以降いくつかの製品をコンシューマ市場に向けて投入し始めた。ソニーはHD Worldで何を目指そうとしているのだろうか。(大河原克行(フリージャーナリスト)●取材/文)
デジタル家電での復権目指す
■「観る、録画する、保存する」
ソニーが掲げた「HD World」は、米国ではハイディフィニション(HD)、日本ではハイビジョンと呼ばれる世界を実現する製品群をコンシューマ分野にも積極的に投入し、来たるべきハイビジョンの世界において主導権を握ろうというのが、その基本的な考え方である。
これまでハイビジョンは、国内の場合、BS放送などで目にすることはできても、コンシューマ市場からは距離感があった。アテネオリンピックのほとんどがハイビジョンで放映されるなど、身近なところにやってきたとはいえ、対応するデジタル大画面テレビや、ハイビジョンに最適化したブルーレイレコーダーの導入は、まだ一部のユーザー層のものだといっていい。
なかでも、「観る、録画する、保存する」という3つの要素のなかで「録画する」の撮影分野は、プロフェッショナルの世界だけのものだった。ソニーは、ここに対して、今年9月、ハイビジョン対応のハンディカム「HDR-FX1」を発表。コンシューマ分野でもハイビジョンを利用できるビデオカメラを用意した。
さらに8月には、デジタルテレビのベガシリーズで、ベガエンジンHDの搭載によって、さらに鮮明なハイビジョン映像を表示できる技術を採用したほか、これまでソニーの直販による限定販売としていたクオリアを、テレビに限定して一般販売ルートに展開し、ハイビジョンの世界をさらに高い品質で提供する製品とした。
また、米国では、同社の独自技術であるSXRDを採用した70インチのリアプロジェクションテレビの投入を発表。これにより、大画面ハイビジョンの世界をより低価格で購入できる取り組みにも余念がない。
もちろん、プロフェッショナル分野向けにも強化した製品を相次ぎ投入しており、映画の世界でもハイビジョン機器の提供を推し進める考えだ。
これによって、プロフェッショナルの放送、上映、制作という領域、そしてコンシューマ分野における、観る、録画する、保存するという3つの領域でもハイビジョンを用意したのだ。
■パソコンを全社戦略に位置づける
このHD Worldのなかで見逃せないのが、パソコンのバイオシリーズが、これを構成する1つの製品として位置づけられたことだ。
HD Worldでは、ハイビジョン映像の編集作業のためのツールとしてバイオを位置づけ、具体的には、デスクトップのタイプRとタイプXをその対象とした。年末商戦向けに58機種を投入したソニーだが、HD World対応はまだ限られた機種だけのものだといえる。
だが、特筆されるのはパソコン事業部門からの提案としてではなく、全社戦略の1つとして、バイオが含まれたという点だ。
バイオは、AV(音響・映像)とITの融合をコンセプトに開発が進められてきたが、それはあくまでもパソコン事業部門からの提案であり、全社規模で見た上でのAVとITの融合ではなかった。
HD Worldでは、その点が大きな違いだといえる。
デジタル家電において、ソニーの出遅れ感は否めない。薄型テレビやDVDレコーダーの製品投入が遅れたのは周知の通り。現時点でも市場をリードしきれている状況にはない。
ソニーの強さを改めて発揮するには、間近に到来するハイビジョンの世界にいち早く乗り出し、ここで主導権を取る必要がある。HD Worldへの取り組みは、ソニー復権の重要な試金石となる。
ソニーの幹部が「HD World」という言葉を頻繁に使い始めた。日本では、「ハイビジョンワールド」という言葉に置き換えて話すこともあるが、どちらも同じ意味を持った今後のソニーのデジタル家電戦略の方向性を示す重要なキーワードである。いわば、ハイビジョンによって作り出される新たな映像文化をソニーのデジタル家電戦略の中核にしようという取り組みだ。そして、ソニーは、HD Worldの実現に向けて、今年夏以降いくつかの製品をコンシューマ市場に向けて投入し始めた。ソニーはHD Worldで何を目指そうとしているのだろうか。(大河原克行(フリージャーナリスト)●取材/文)
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