中堅システムインテグレータのインフォコム(沼惇社長兼CEO)は、情報セキュリティビジネスの拡大を狙いに、東日本エリアを中心に営業展開するITベンダー数社と組み、近く企業連合を結成する。他のITベンダーのセキュリティソリューションと組み合わせることで、ソリューションの幅を拡充。共同プロモーションなど営業面でも協力する。セキュリティ市場は、製品・サービスが多様化・複雑化し、「自社だけでは総合的なセキュリティソリューションを提供できない」状況を迎えつつある。他のITベンダー間でもアライアンス戦略が活発化しており、協業によるビジネス展開が今後も増えそうだ。
東日本対象にITベンダーと協業

インフォコムは、情報セキュリティビジネスの拡大に向けた協業施策として、すでに西日本を主力営業エリアとするセキュリティベンダーとアライアンス組織「西日本セキュリティコンソーシアム」を結成している。参加企業はインフォコムのほか、九電ビジネスソリューションズ(福岡市、五嶋皓洋社長)、エネルギア・コミュニケーションズ(広島市、鈴木知己社長)、エスシーラボ(岡山市、坂本文信社長)の計4社。
各社のセキュリティ製品・サービスを組み合わせたソリューションを作り、「個人情報漏えい対策カウントダウンセミナー」などのプロモーション活動を西日本エリアで共同展開している。各社が得意とするセキュリティソリューションを持ち寄り、顧客への提案に厚みを持たせるとともに、それぞれの販売チャネルを活用することで営業を効率化し、販売に弾みをつける狙いだ。
東日本エリアで近く結成するITベンダー数社との企業連合は、この「西日本セキュリティコンソーシアム」の“東日本版”。インフォコムが旗振り役となり、特徴だったセキュリティソリューションを持つシステムインテグレータなどでコンソーシアムを組む予定だ。
具体的なアライアンス企業は現在詰めている段階だが、「10社程度の規模で構成する」(インフォコムの森義彦・モバイルインターネット本部ContactChannel部セキュリティグループ課長)考えだ。
インフォコムはこれまでにも、セキュリティ分野においてITXイー・グローバレッジ(ITX-EG、野村昌雄社長)、インサイトテクノロジー(小幡一郎社長)の2社と10月下旬に提携を結び、データベースからの情報資産流出防止ソリューションを共同開発することを決めた。
また、ネットワールド(中村康彦社長)、日本高信頼システム(JTS、澤田栄浩社長)の2社とは、シンクライアントシステムのセキュリティソリューションでアライアンスを組むなど、協業戦略を加速させている。
インフォコムの森課長はその理由について、「セキュリティのジャンルは幅広く、1社で製品・サービスをすべて揃えるのは不可能。各社の特徴を生かした総合的なセキュリティソリューションを作ることで、変化の激しいセキュリティビジネスに対応していく」と説明する。
セキュリティ分野のアライアンスでは今年7月、大塚商会(大塚裕司社長)がリード役となり、セキュリティベンダーを中心に計9社で構成する協業体制がスタートしている。その狙いも、「ユーザーはどの製品を導入し、どのベンダーに頼めばよいか分からないのが現状。“何でもできる”というイメージをユーザーにアピールするため」(大塚商会の後藤和彦・マーケティング本部テクニカル販売促進部部長)だ。
情報セキュリティ分野は、急速に製品・サービスの多様化・複雑化が進み、ITベンダー各社は、自社製品だけでのソリューション作りに限界を感じている。こうした背景のもと、他のITベンダーと協調体制を組むことでソリューションの幅を広げる動きが、特に中堅ITベンダーの間で顕在化している。