個人向けもようやく回復
映像やセキュリティがキーワード
長く低迷が続いていたパソコン市場に明るい兆しが見えてきた。電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、2004年暦年のパソコンの国内出荷実績は、台数が1145万1000台(前年比8%増)、金額が1兆6569億円(同3%増)となった。法人向けが市場をけん引し、個人向けも回復傾向に向かっているという。こうした状況を踏まえ、パソコンメーカー各社は、個人需要向けに引き続きAV(音響・映像)機能を強化。企業ユーザー向けにはセキュリティを強化した製品などでユーザーの買い替え意欲を煽っていく。(佐相彰彦●取材/文)
■04年10-12月は2ケタ増に 法人向けは7四半期連続でプラス JEITAによれば、04年10-12月のパソコンの国内出荷実績は、台数284万台(前年同期比13%増)、金額4149億円(同13%増)と2ケタ成長を記録。台数では、個人向けと法人向けともに前年同期を上回ったという。法人市場に限れば、03年4-6月から7四半期連続で前年同期を上回っている。10-12月の段階で、ようやく個人向けを含めた市場全体が回復傾向に向かった格好だ。
この市場環境について片山徹・JEITAパーソナルコンピュータ事業委員会委員長(NEC執行役員常務)は、「個人市場では、映像ニーズの高まりでAV機能を搭載したパソコンの購入者が増えた。法人市場では、2000年(Y2K)問題のリプレース需要や、個人情報保護法によるIT投資の高まりなどが市場の拡大をけん引した」と、好調の要因を挙げている。
家電量販店やパソコン専門店では、冬のボーナスやクリスマス、年末など最も稼ぎ時になる12月にパソコンの販売が堅調だったショップが多い。「パソコンでテレビを見ることが普通になりつつある」というのが共通の意見。テレビチューナーや記録型DVD搭載、大容量のHDD(ハードディスクドライブ)を搭載したAVパソコンが、画質面で薄型テレビと遜色なく、DVDレコーダーの役割を果たし、なおかつパソコンの機能が使えるという用途を、ユーザーが利便性と意識している表れといえる。
■05年予測は前年比7-8%増 メーカー各社、強気の発言 日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)がこのほど開催した新春セミナーで、主要パソコンメーカーの幹部が「2005年我が社の製品・販売施策」と題して特別講演を行った。登場したメーカーは、ソニー、東芝、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、NEC、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、富士通、アップルコンピュータの7社。各社とも、パソコンビジネスを拡大、新市場の開拓に向けた戦略を次々と打ち出した。
ソニーは、「2000年の市場規模に戻っていないが、デジタル家電市場が急速に拡大している。ここに新市場を創出するポテンシャルがある」(木村敬治・執行役専務)として、パソコン「バイオ」の製品力を強化する方針だ。たとえば、新しいインターフェイスへのチャレンジとして、非接触型ICカード「フェリカ」のリーダーライター搭載モデルを発売。「パソコンが一層便利なツールとなる新しい提案を行っていく」(同)と意欲をみせる。
東芝は、「05年は成長する節目の1年になる」(能仲久嗣・執行役常務PC&ネットワーク社副社長)と、パソコン事業の黒字転換をアピール。個人向けでは、「HD DVD」を搭載したAVノートパソコン「コスミオ」を今年中に発売する。企業向けでは、1月19日に発売した「ダイナブックSS」で、HDDプロテクション機能の強化やノート初のRAID搭載、データ漏えいを防ぐBIOS/HDDパスワードなどを競合他社との差異化ポイントとしている。
IBMは昨年末、中国のパソコンメーカー、聯想集団(レノボグループ)へのパソコン事業売却を発表した。「今年6月までに設立する新会社は、パソコンに特化した無駄がないビジネスを手がける。しかもIBMの高品質や評価の高いサポートを継続して行っていく」(向井宏之・日本IBM理事・PC&プリンティングシステム事業部長)と、パソコンビジネスに関してはコストやサポート体制の点で競合他社より優位にあるとし、「今年は台風の目になる」(同)と宣言。
NECでは、「商品力、スピード、CS(顧客満足度)ともにトップを追求していく」(片山常務)とし、キーワードとして個人市場でAV機能の進化、法人市場がセキュリティ機能の強化を挙げている。
日本HPでは、「昨年は、販売パートナーさんのお陰でパソコン、サーバーともに前年比30%増を超える出荷台数になった。IAサーバーでは、宿敵デルを抜いて国内2位になった」(馬場真・副社長)とし、今年も引き続きパートナーとの連携を強化していく方針を示す。さらに、「今年は、情報漏えい防止などセキュリティを強化したブレードシステムを拡充する」(同)。アップルコンピュータでも、「法人ビジネスに関しては、昨年10月から間接販売を徹底している」(山元賢治・代表取締役)と、パートナーとの協業強化を主張する。
富士通は、デスクトップが福島県、ノートブックが島根県というように製造拠点が国内にあることによる高品質の製品開発をコンセプトに、「ジャンルにとらわれないパソコンを開発する」(伊藤公久・経営執行役パーソナルビジネス本部長)考えだ。
JEITAでは、具体的には05年暦年のパソコン国内出荷台数見通しを示していないものの、「前年比7-8%増にはなるだろう」と、今後も成長路線が続くとみている。メーカーにとっては、先行きの不透明感が続いていたパソコンビジネスで、鮮明な拡大戦略を打ち出せる状況になったようだ。
 | 独自モデルで利益を確保 | | | | | | パソコン市場が回復する一方、販売価格の下落が止まることは難しいといえそうだ。日本HPでは、「デルへの対抗策として低価格化をとことん追求していく」(馬場真・副社長)としている。日本IBMでは、「これまでは、手頃な価格という意味での“リーズナブル・プライス”だった。今年は、ユーザーにとって良い価格(安い価格)で販売する“グッド・プライス”を遂行する」(向井宏之・理事PC&プリンティングシステム事業部長)のだという。 |  | 「パソコンを単に販売するだけでは利益の確保は難しい」というのが現段階でも共通の意見。JCSSAの新春セミナーでは、伊藤元重・東京大学大学院経済学研究科教授が、「パソコンはコモディティ(日用品)化しているため、ますます儲からなくなる」と指摘。「独自のビジネスモデルの構築が重要になる」(伊藤教授)と訴える。さらに、「顧客の立場で商品やサービスを提供する仕組みを作り、“ソリューション”を提案することがポイント」(同)という。 | | |